もっと強くなって、君に会いに行く!

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元になったエピソード

始まりは、小学6年生のとき。
父の仕事の都合で私の引越しが決まりました。
当時、剣道の道場に通っていた私には、仲の良い男子がいて、そのことを伝えると、
「なんで!?中学でも一緒に剣道しようって約束したじゃん!」
と言われました。
彼に誘われたのがきっかけで始めた剣道が好きになり、私もそのつもりでいました。
でも、今更何を言っても引越しすることは変えられません。
「そんなぁ…。」
優しくて仲間想いの彼は私以上に落胆していましたが、何かを決意したように顔を上げ、
「絶対また会おう!俺、もっと強くなって大きな大会に出て、さくらに会いに行く!だからその時は、俺のこと1番に応援して!」
と言ってくれたんです。
彼の言葉が嬉しくて、笑顔で約束をした日から1ヶ月後、私は新しい街に引越しました。

彼との約束を守るため、中学に入学早々剣道部に入部した私ですが、あろうことか、同級生は有名道場の人ばかり…。
毎日の稽古はきつく、遠征や試合に出ても彼には全く会えない日々が続きました。
精神的にも身体的にも辛いことばかりで辞めたかったけど、約束が忘れられずとにかく稽古をこなし、先輩が引退した中2の夏、私は女子主将に選ばれました。
チーム全体が強くなっていき、全国大会出場も現実的になってきた時、運命の日が訪れました。

その日は、ある大学が全国でも名だたる中学校を集め、大規模な大会を開催した日でした。
幸運にも私たちも招待され、男女ともに順調に勝ち進み、残すは決勝戦のみとなります。
男女で会場が異なり、決勝戦だけは男子側の体育館で行われるため、移動して準備をしていましたが緊張しすぎて、私だけロビーに出たときでした。
別の扉から出てきた男子グループの1人と目が合いました。
「さくら…!?」
「えっ…!?」
彼でした。
2年間、1日たりとも忘れず、再会を夢見ていた姿が
そこにありました。
あまりに突然のことで言葉が出ず、涙が溢れて崩れ落ちた私を、彼が抱きしめてくれて、ハッピーエンドで終わると思ったそのとき…。
「おい、その子…!!」
彼のチームメイトの1人が驚いたように言い、私の道着を指さしました。
そこには私の中学校名が刺繍してあります。
その瞬間、彼が言葉を失いました。
「ど、どうかした?」
不安な私に返ってきた言葉は、
「俺たち、敵どうしだ…。」
と、短い一言。
なんと、これから私の学校の男子チームが対戦するのは、彼のチームだったのです。
「…。」
せっかく会えたのに、「1番に応援する」という約束を叶えることができません。
しかも、私も彼も主将です。
複雑な気持ちのまま、決勝戦は幕開けとなります。

私の大将戦が始まったとき、女子は引き分けの状態で、私の勝敗で勝負が決まる展開でした。
一方男子は彼のチームが接戦を制し、優勝を決めたところでした。
試合中盤、何度かチャンスがまわってきて、このまま勝てると思った瞬間、
「ガチャンッ…!!」
打ち合ってもつれた拍子に、係員の机の所まで飛んでしまい、こけてしまいました。
幸い誰にも当たらず、立ち上がろうとしたとき…
「痛っ…!」
なんと、足を痛めてしまっていたのです。
今までに経験したことのない腫れで、歩くのがやっとでしたが、ここで棄権すれば私のチームが負けます。それだけは嫌だったのでそのまま試合を続けました。
しかし、強豪校の大将相手に、足が使えないのではどうしようもありません。
もうダメだ…。負ける…。
そう思ったときでした。
「さくらー!!諦めるな!!!」
声が会場に響きました。
「…!!」
視界の端には、チームメイトや監督に押さえられながら、必死に叫ぶ彼がいました。
その瞬間、私は覚悟が決まり、正面勝負を挑みました。
あがった旗は紅、私の勝利でした。

試合終了後、周りの静止を振り切って飛んできた彼は、歩けず、痛みのためうずくまっていた私を抱きしめ、手当てをしてくれました。
「こんなにひどい怪我なんかして…。」
痛いのを隠そうと笑っていましたが、彼は全部お見通しだったようです。
「まだ痛むか?」
「我慢すんな。ちゃんと言え。」
小学生のときより声が低く、背丈も高くなっていましたが、あの優しさはそのままでした。
周りにいた人たちは最初は敵どうしなだけに戸惑っていましたが、それでもきちんと認めてくれました。
手当てが終わり、
「ありがと。」
とお礼を言うと、頭を撫でながら褒めてくれました。
そのとき突然、
「ずっとさくらを探してた。やっと見つけたよ。もう、どこにも行かないで。」
と照れながら言い、
「俺と、付き合ってください。」
と告白してくれました。
みんなが見ていて恥ずかしかったけど、それ以上に嬉しくて、
「はい…!!」
と返事しながら彼の胸に飛び込みました。
「ちょっ…!?怪我してんだからおとなしくしてろって…!!」
離れていてもずっと気持ちは繋がっていたことがわかって、すごく幸せな1日は、私たちの大切な記念日になりました。

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written by さくら