これは、私の初恋のお話です。
私の初恋は高校2年生の1月、相手は大学病院の研修医の先生でした。
当時私は、病気で長く辛い入院生活を送っていて、心も身体もボロボロになっていました。そんな時、1ヶ月間限定で、私の担当になってくれたのが研修医1年目の先生でした。
先生が初めて私の病室に挨拶に来てくれた時、「初めまして!これから1ヶ月間担当になります。よろしくね!」と終始笑顔で話しかけてくれました。先生の笑顔は本当に明るくて、優しくて、元気な人柄が伝わってきました。
私は小児病棟ではなく、大人の病棟に入院していたので、周りは歳の離れた大人ばかりでした。なので、若くて元気な先生に会った時、「歳の近い人が来てくれた!」と、とても嬉しかったです。(歳が近いと言っても、10歳差です?)
それからは、先生は忙しい合間をぬってたくさん私に会いに来てくれて、いろんなことを話しました。私のいた病院では、お医者さんは普通1日1回診察に来るくらいだったのですが、先生は朝出勤してきた時、勤務中、勤務が終わって帰る時の3回くらい来てくれました。そしてたくさん話をして、先生のことを知れば知るほど、私はどんどん先生の強さ、優しさ、明るさに惹かれていきました。先生はたくさん友達がいて、中学ではテニス部で活躍しながら生徒会にも入り、高校になって医者の道を目指し、今日に至るまで夢を追い続けてきた人でした。
そんな先生の笑顔が見たくて、私も早く良くなろうと、頑張って食事を完食したり、学校の勉強を進めたりしました。先生はそれを見て、「はるかえらい!頑張ったじゃん!」と褒めてくれたり、時には勉強の分からない所を教えてくれたりしました。
そして治療のかいもあり、院内外出の許可が降り、主治医と私と先生とで病院内をお散歩できるようになりました。先生は「本当はダメなんだけど」と言いつつ、私を外の景色が一望できる、高い所にある病棟に連れて行ってくれました。「はるかこういうとこ好きでしょ!俺も好き。ここに来たのはナイショだよ!」と先生は嬉しそうに言いました。外出できる日は毎日、そこでイスに座り、時間の許す限りお互いのことを話しました。そして、その時間、先生は私にとてもたくさんの事を教えてくれました。「限界を決めるのはいつも自分自身。はるか、限界を決めちゃだめだよ。夢は諦めなければ叶うんだよ。」「こんな俺でも医者になれたんだもん。はるかもきっと、何にでもなれるよ!いつからだって遅くはない。いつか自分の夢を見つけた時、どうせ自分はダメなんだ...とか思わないで、俺を思い出して頑張れ!応援してるから」先生の言葉で、病気になってから夢も希望もなくしていた私に、もう一度立ち上がる勇気が湧きました。
でもそうやって思い出を増やしていくうちに、あっという間に時間が経ち、お別れの日が近づいていきました。先生と会えなくなる、もう先生の笑顔が見れなくなる...そう考えると、胸がはち切れそうでした。でも、私は先生にとってはたくさんの患者の中の1人、そしてここは大学病院、医者と患者の関係上、どうする事もできない...そんなことをぐるぐる考えて、それでもどうしても想いを伝えたくて、手紙を書いて、最後の日に渡すことにしました。何度も下書きをして、家族に綺麗なレターセットを買ってきてもらって、丁寧に慎重に書きました。途中、やっぱりこんなものもらっても迷惑だよな、先生引くだろうな...と何度も迷って筆が止まったけど、何とか書き終えて、最後の院内外出の時に渡しました。「先生、これよかったら読んでください。今まで本当にお世話になりました!」重くならないように、明るく言うんだ!と、精一杯の笑顔で言い切りましたが、心の中ではずっと泣いていました。手紙を受け取った先生はとても喜んでくれて、「これからも頑張ってね。俺はどんな病気も見つけられる医者になる。はるかは病気を早く良くする。約束だよ。」と言ってくれました。院内外出から帰ってきて、先生の勤務時間が終わるまで、先生はずっと隣にいてくれました。私の点滴を固定するテープにニコちゃんマークとガンバレ!というメッセージを書いてくれて、頭をポンポンしてくれたりしました。私は気を緩めたら泣いてしまいそうで、ずっとバレないように唇を噛んでいました。泣いたら私が先生のこと好きってバレてしまうから。もしバレたら、先生が気まずい思いしたり、噂が流れちゃって居ずらくなっちゃうかもしれないから。「この1ヶ月間ずっと、先生のこと何とも思ってないフリしてたんだよ。先生に背中さすってもらった時も、私の弱音聞いてもらった時も、ずーっと周りにバレないように平然と振舞ってたんだよ。ほんとは先生のことが好きなのに。大好きなのに...」そう心の中で叫んでいました。
先生、あれからもうすぐ3年が経ちますね。元気にしていますか?私はその後無事退院して、何とか今日も元気にやっています。今も通院してるけど、待合室の掲示板で先生の名前を見かける度に、あの頃の懐かしさと共に私も頑張らなきゃって思っています。きっと先生も、もう研修医じゃなくて、立派なお医者さんになって毎日頑張ってるよね。
先生、あの時唇噛んでたから結局言えなかったの。私が1番言いたかった言葉。
「ありがとう」
written by ぽにょ
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