ある日の放課後、私はポツポツと降り続く雨を
教室の中から眺めていました。
『傘、持ってくればよかったなぁ…』
ずっとこの気持ちがこだまします。
教室に人気は無く、雨の音だけが響いていて
時間が経つに連れ雨も強さを増してきました。
頭の中で考えていた『ダッシュで下校』という
考えもすぐにおじゃんになってしまいます。
でもその時、教室のドアが思いきり
ガラッと開いたのです。
「…帰らないの?」
教室に入ってきた一人の男の子が
ぽつんと取り残された私を見て口を開きます。
「傘、忘れたの。そっちこそ帰らないの?」
この男の子は同じクラスの男子で、
普段はお調子者です。
でも密かに女子から人気があり、なにか
近寄りやすくて近寄りがたい…そんな子でした。
その男の子は、
「俺も忘れたんだけど…どーしよ」
と、頭をガシガシと掻きます。
「私はここで雨が止むまで待とうと思うけど…」
私は自分のしていることを提案すると、
「……俺もそうしよっかなぁ…」
と言って男の子はさり気なく
私の前の席に座りました。
「んじゃさ、数学教えてよ。明日当たるから」
「…もしかして教えてもらう前提で
ここで待つことにしようとか
思ってないでしょうね?」
今日の授業中にほぼ寝ていたその男の子に
問いかけます。
すると男の子は、
「まぁ、大体はそれだけど」
と言って、視線を彼の筆箱にそらします。
「…?」
このときの私はあの言葉の意味が
よくわかっていませんでした。
でも唯一わかっていること、それは
二人きりでいれること、彼を独占できること、
それが本当に嬉しかったのです。
あぁ、私、彼に恋してたんだな。
と、今はつくづく思っています。
written by 仁 華 .
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