夏目漱石の本なんて一冊も読んだことがないけど、あの人が生み出した有名な言葉は知ってる。
でも毎日一緒に帰るこの子は知らないみたいだ。何の気もなく、屈託のない笑顔で「月、綺麗だね~」なんて言って笑っている。その綺麗な月を眺めながら、ちょっと君を困らせてみたくなった。
「ねえ、知ってた?”月が綺麗ですね”って、昔の告白の言葉なんだよ」
すると君は表情を変えず、「なんか、ロマンチックだね~」と笑顔のまま。
効果なしかな、と気落ちしながらもう一度君の顔を見ると、少し赤らめた顔を僕に見せないようにしてるみたいだ。なんだ、効果あったじゃん。
僕は綺麗な月を見るたびにあの時のことを思い出すけれど、君はどうだろう。
思い出してくれていたらいいな。
written by 恋エピ公式
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