振り返って~運命の出会いはアプリの中に~

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元になったエピソード

俺は、今年で29歳。大学や高校生の時の友達は、徐々に自分たちの家庭を持ち始めていた。

一方、俺は仕事ばかりで恋愛なんてかなりのご無沙汰。
「そろそろ結婚を・・・!」なんて思うが、相手がいないことには始まらない。

まずは形からと、婚活アプリに登録!
アプリなんて初めてだから身構えていたが、登録している方の中には俺好みの女性がいたり、逆に俺に興味を持ってくれたりする女性も。

「なんだ!結構簡単じゃん!これならすぐに彼女が出来るかも・・・!」
なんて思ったのは最初だけ。

何人かとやり取りを重ねて、中には食事に行ったり、映画やショッピングに行ったり。
「いい感じかも・・・!」と思ったのも、つかの間。その後すぐにやり取りが途切れたりした。

何か気に障るようなことをしたのだろうか?
楽しかったのは俺だけ・・・?

そんなことを思うたび、俺の心が疲れていくのが分かった。

そんなある日、アプリから「いいね!」の通知が入った。
アプリを開いてその女性のプロフィールをみると、“しょうこ”という名前が。ただ顔写真はなかった。
いつもは「顔写真がないと、どんな人か分からないなー・・・」とちょっと思ってしまうのに、何故かこの人は気になった。

「とりあえず、やり取りしてみるか!お話したらいい人かもしれないし!」

いつも女性からいいね!をもらった時のメッセージは「はじめまして!いいね!ありがとうございます!」だった。
いつもと同じように送ると、すぐ返事が来た。
「こちらこそありがとうございます!よろしくお願いします!」

ここまではいつも通り。でも、そのうちいつものように・・・

とはならなかった。その後もメッセージのやり取りは続いた。
そしてある日、お相手から「一緒にご飯でも行きませんか?」と誘われた。

メッセージのやり取りは楽しいし、文章からもいい人なのが伝わるし・・
「いいですよ!ぜひ!」と返した。

デート当日。俺は、ちょっと早めにお相手の女性の行きつけの焼き鳥屋さんへ向かった。その途中で「そういえば、やり取り楽しくしてたけど相手の顔を知らないや!」となった。

どうしようかと思いながら、お店に到着。
入ってみると、カウンターに一人の女性の後ろ姿が・・・。きょろっとお店の中を見回しても、そのほかにはグループのお客さんしかいなかった。

「あの、“しょうこ”さんですか?」
振り向いたその女性をみて、妙に納得した。いや、しっくりきたというべきなのか。
可愛らしく、それでいて明るい雰囲気と笑顔をした彼女の顔が俺を見ていた。


あれから30年。


今日は俺の定年退職の日。職場の部下達、同僚、上司から労をねぎらう言葉や別れを惜しむ言葉を多く掛けていただいた。大きな色鮮やかな花束に、職場のみんなからの寄せ書き、部下達からのちょっとした贈り物をたくさんいただいた。

両腕に抱えきれない程のお祝いの品と少し寂しい気持ちを抱えつつ、帰路につく。
様々な思いが巡るその途中で、ふとあの日のデートを思い出した。

あの時、何を納得したのか。なぜしっくり来たのか。

俺自身もよくわからない。

でも一言でいうのなら、「運命の相手」ということだったのではないだろうか。


30年見慣れた星空が輝く、いつもの通勤路を歩き進む。俺の家が見えてきた。

両腕には抱えきれない程のお祝いの品。そして小さな紙袋。
これは30年家庭を支えてくれた、守ってくれた愛する妻へのプレゼント。

家の玄関前についた。いつものようにインターフォンを一回鳴らす。
玄関ドアの奥からパタパタ歩く音が聞こえてくる。


ああ、もうすぐ終わる。けれど、これからもまだまだ続く。


目の前のドアが開く。

「おかえりなさい。お仕事、お疲れ様でした。」

30年変わらない可愛らしく、それでいて明るい雰囲気と笑顔をした妻の顔が俺を見ていた。

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written by あもん

マンガ作者

miyuka

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miyukaと申します。 ほんわか系、癒し系を得意としております(*^-^*)

エピソード投稿者

あもん

男性 投稿エピ 11

「聞いて目の前に浮かぶ、ショートストーリー」を目指して、頑張って作ります。