高校野球と共によみがえる、あの日の思い出

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元になったエピソード

これは高校生の時の話です。
彼と初めて会ったのは入学式の日の下駄箱。登校時間が早く、まだ誰もいない下駄箱で靴を履き替えていると、後から1人の男子が来ました。「この人同じクラスなんだ」と思っていたら、段差に気づかず、つい踏み外してよろけてしまいました。初対面の人に恥ずかしいところ見られたと思いチラッと彼を見ると、ふふっと笑っていて、その笑った顔や纏っている雰囲気をみて、一瞬で恋に落ちました。たった一瞬の出来事だったけど、これがきっかけで彼とは仲良くなりました。
彼は野球部で私も野球好きということもあり、しょっちゅう野球の話をしたり、私が応援しているチームが負けるとからかわれたり。好きだという気持ちはありながらも、そこから先に進む勇気はありませんでした。何故なら彼は他クラスからも話題になるくらいイケメンでした。絶対に私と付き合えるはずがない、だったら今のままがいいと、そう思っていました。そんな時、クラスで1番仲の良い子から突然「さっき彼に告白した」と言われました。内心パニックでしたけど、その子は可愛くてスタイルも良く、性格もとっても優しい子なので、もし上手くいっても応援しようと思っていました。ですが次の日言われたのは振られたという報告でした。「言ってもらえたことは嬉しいけど、この学校には野球をするために入学したから、付き合うとか考えられない。」とのことでした。いつもはクールな彼ですが、誠実な対応に私はますます好きになりました。
結局1年〜3年まで彼とは同じクラスでした。
でも関係性は変わりません。3年の夏で野球部を引退した彼は朝練がなくなった代わりに教室で受験勉強をしていました。私が登校をすると何故か私の席に座って勉強をしていたり、勝手にミンティア食べたり笑 テストの点数を教えあったり。ただ仲が良かっただけでした。
彼は都内の大学へ進学が決まり、私は別の県の大学へ進学する事になりました。もう会うことはない。だったらこの想いを伝えよう。でも、恥ずかしいしやっぱり辞めようかな。そんな風に悩んでいたところ、あの地震が起きました。卒業式は延期になり、私たちは自宅待機。連日の報道を目の当たりにし、『伝えなくちゃ』という思いが強くてなりました。今の思いを、いや3年分の思いを彼に伝えよう。
むかえた卒業式。彼を下駄箱に呼びました。扉の向こうにも人がいたので余計に緊張して、中々言い出せませんでした。いつもだったらおちょくったり無関心な対応をする彼ですが、「うんうん」と私が話すのをじっと待っていてくれました。やっと落ち着いて息を吐き、「ずっと好きでした」と言い彼の顔を見ると耳が真っ赤!!ブラックチェリー並みでもはや赤黒い。それを見て私は緊張が頂点に達し、「ありがとう」と彼に言われたところで「いやあの、ただ言いたかっただけだから!大学でも頑張って!じゃ!」と私は言い逃げをしてしまいました。
私の恋は正真正銘の高校生活3年間丸々彼への片思いでした。入学式の下駄箱で恋をしたから、告白は絶対に恋をした同じ場所と決めていました。

あれからもうすぐ10年。あの日以来彼とは一度も会っていません。大学時代に一度だけ山手線の車内で見かけたことがありましたが、声はかけませんでした。もう結婚しているのか、どこに住んでいるのかなどなんの情報も知りません。
私は今結婚を考えている恋人がいます。でも、夏の高校野球の季節になると、ふと彼のことを思い出し、ちょっぴり胸がギュッとなります。

こんな思い出が出来たことだけでも、彼には感謝をしています。いつか話せる日が来たら、また笑って話したいです。

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written by なこ

マンガ作者

ちなきち

女性 投稿マンガ数 1

インスタでエッセイ漫画を描いているちなきちと申します! 普段ホラー系を中心に描いているため、たまにはキュンとする話が描きたい!と思い登録してみました。 読んでいただけると嬉しいです。

エピソード投稿者

なこ

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