美味しかった玉子焼きと中学時代の思い出

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元になったエピソード

私が中学一年生の頃のお話です。
私は地元の中学校に通っており、友達もいて楽しく過ごしていました。

ところがある日突然、自分のいた友達グループから仲間外れにされてしまい
その元々仲の良かった子達は、私の事を嫌う別の女の子達がいるグループに入っていきました。

その日から、地獄の日々が始まりました。
休憩時間、移動教室、ペア決め…など。
そして、お昼ご飯、これが一番辛かったのを覚えてます。
1人でどんな行動をしても、陰口を言われました。

みんなが楽しそうに食べている中、1人でご飯を食べるのは、社会人の今でこそ平気ですが
中学生にはとてもキツイものでした。
両親はこの事を知っていたので、食べるのに時間がかからないものを用意してくれましたがそれでも辛かったです。(両親と担任の先生とで話し合いをしたのですが、ここでは割愛します)

そんな日が数日続いたある日、比較的仲の良かったクラスメイトの男の子に声を掛けられました。

彼は私の現状をもちろん知っていて、でもその事には触れずに、私にお昼ご飯を自分のグループと一緒に食べよう。と言ってくれました。
しょっちゅう私の事をからかってた彼、まさかそんなふうに言ってもらえるとは思っておらず、とても驚きました。

次の日から一緒にご飯を食べる日々が始まりました。
グループの中で、彼の隣に机をくっつけて、お弁当箱を開けると中には卵焼きが入っていました。
彼のお弁当箱にも、同じように卵焼きが入っており、お互いの卵焼きの味を知りたい、という事で交換をしました。

その様子を見ていた女の子達が、遠巻きに私の事で何かを言っているのが聞こえ、身体が固まりました。
すると、彼は早く食べなよ、と茶化す様に私に言ってくれました。
その卵焼きは仄かに甘く、優しい味でした。
今まで食べた卵焼きの中で一番美味しく感じました。(思わず泣きそうになりましたが、我慢しました)

しかし、その事を面白く思わなかった、恐らく彼女達の仕業なのでしょう、私の靴箱から上履きを片方だけ消えていました。
その事に気づいたのは放課後、居残りで課題をしていたので他に生徒達もおらず、1人なんとも言えない気持ちになりました。

そのとき、例の彼が下駄箱にやって来ました。
彼は野球部だったので、その関係で学校に残っていたのです。

私の状況を知った彼は、先生を呼んでくる、と先生に報告しにいってくれました。
先生が来てくれて、先生の車で送ってもらう事に決まると、彼とはその場で別れました。

その日は金曜日だったので、月曜日に学校に行くと彼に出会いました。
彼は、私の元に来ると、もう大丈夫だと思うから。でも何かあったら言えよ。
そう言い男子の輪に戻って行きました。

どういうことなのだろう?
と疑問に思っていると、同じクラスの別のグループの女の子達に声を掛けられました。
今で言う、クラスのカースト上位にいる子達です。

彼女達は私に、あいつから聞いた、これからは私達と行動しよう。
と言ってくれました。

彼女達と行動を共にする事にしました。
そして、あれだけ言われていた陰口や、陰湿な行動がピタリと止まったのです。
声を掛けてくれた彼女達から後から聞いたのですが、彼が彼女達に土日の間に相談をしてくれていたそうです。

その後、私は平穏な中学3年間の学校生活を送ることができました。
そしてその後、そのまま私は中学の卒業式を迎えました。

卒業式の日、私は彼を呼び出し、改めて彼にお礼を言いました。
彼はいつもの無邪気な笑みでなんてことはない、無事に卒業を迎えられてよかった。

と言ってくれました。
そして、貰って欲しいと制服の第二ボタンを貰いました。
その後、彼は県外の学校に進学し、私は地元の高校に進学しました。
携帯も今ほど、中学生に普及はしていなかったので連絡先を知らないまま、そのまま疎遠になってしまいました。

今なら、言えます。
彼が好きでした、彼も私のことをちょっとでも特別に思ってくれてたら、と思ってしまいます。

かけがえのない大切な私の、中学の思い出です。

今でも甘い卵焼きが大好きです。

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written by 夏樹

マンガ作者

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エピソード投稿者

夏樹

女性 投稿エピ 6

25歳の成人女性です。自分の過去、現在を振り返ります。