俺が野球選手でお前はアナウンサー29

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翌朝、教室に入るとハナとうたが私の席にやってきた。

ハナ「おはよ〜♪」

私「おはよう」

うた「おはよ。ハチ、北山にストラップ渡したでしょ?」

私「うん」

うた「筆箱につけてたよ。ハチのはどこ?」

私「筆箱につけてるよ」

ランドセルの中の教科書を机の中に移しながら筆箱を取り出して机に置くと、ハナが「きゃ〜」と興奮気味に私の筆箱を掲げた。

うた「貸して」

そんなハナから筆箱を奪い、ストラップを見つめるうた。

うた「ドゥクシッ」

ハナ「えっ?!」

筆箱から鉛筆を取り出して男子がよく使う効果音を口にしながら、ストラップをつつくうたに、驚きながらも何もできないハナと私。

うた「ドゥクシッドゥクシッ」

ハナ「……うた?」

うた「こんなの早く切れればいいのに」

私「……」

うた「なんてね、嘘だよ?(笑)」

ハナ「なんだ、いきなりどうしたのかと思ったよ〜」

私「……あはは」

うた「ハナ、あっち行こ」

そう言うとハナの席に行ってしまう2人。急いで机の上を整理して2人の後を追いかけたが、私が来た途端に場の空気がシンと静まり返る。

うた「……」

ハナ「……」

私「今日、プールだね!2人とも入れそう?」

うた「……」


あぁ、今日はずっと無視されるんだろうな


そう察した時、場の空気に耐えきれなくなったハナが控えめな声で返事をした。

ハナ「……私は、入れるよ…」

私「よかった…うたは入れそう?」

うた「……」

めげずに問いかけ続けても、うたからの返事は一向に返ってこない。

私「…見学するの?」

うた「……知ってどーすんの?ハチに関係ないじゃん。てかウザいから無理矢理話しかけてこないでくれる?」

イライラした様子で捲し立てるうたに圧倒された私は、ここで引き下がったらずっと元に戻れなくなってしまう気がして、冷静に自分の気持ちを伝えた。

私「ごめん。私はみんなと一緒に入れたら嬉しいなと思ったから聞いたんだよ」

うた「あたしにはゆうくんもいるし、ハナも他の友達も沢山いるから、別にハチがいなくても楽しめるから」

私「そんな…」

ハナ「……」

これ以上その場にいたら泣いてしまいそうだったので、私はなるべく自然に、足早にトイレへ向かい、溢れる寸前の涙を拭った。


うたは怒ってる

ストラップなんて付けてきたから


でも北山くんと一緒につけたくて買ったストラップ

一緒に付けよう、って言ってくれたストラップ

外したいとは思えなかった。


“正々堂々、勝負ね!”

そう言ってお互いに挑んだ恋なんだから、何も後ろめたく思うことはない。

そう自分に言い聞かせていないと、私が悪者で、嫌われて当然で「あんたがいなくても楽しめる」と言われても仕方ないと、どんどん自分自身を責めてしまいそうだった。うたの一言は、私にとってそれほど大きなダメージとなった。


授業の合間や休み時間になると、うたはハナを連れて私から離れた所へ移動してしまうため、残された私は一人自分の席に座って時間を潰していた。

北「元気?(小声)」

私「っ!びっくりした…」

そんな私に気付いたのか、北山くんは

北「今日ぜんぜん竹本たちと話してなくね?…仲間外れにされてんの?(笑)」

と冗談交じりに聞いてくれたけれど、何から説明したらいいか分からないし、心配かけたくない気持ちから、

私「たしかに話してないかも…!仲間外れかな?(笑)」

と冗談で返してしまった。その時の私には、話しかけてくれるだけで十分だった。


北「…ちゃんと付けてるな」

北山くんは私の筆箱についたストラップを触りながら

北「今朝、みんなから冷やかされた」

と静かな声で話した。

私「付けてくれてありがとう」

北「俺の方こそありがとう。大事にする」

北山くんと話している間は、はぶかれてどんよりと沈んだ気持ちが軽くなった。北山くんから交換ノートを受け取って、ランドセルにしまう。


うたとの問題は解決するまで時間がかかりそう

だけど、私は私の事を好きでいてくれる人たちを大切にしよう


そう決心して、極力暗くならないように努めた。



written by ハチ

エピソード投稿者

ハチ

女性 投稿エピ 30