俺が野球選手でお前はアナウンサー28

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日曜日の朝、私は交換ノートに書かれた北山くんの電話番号を見つめながら、家の電話(子機)を握りしめて


今だ…!

やっぱり無理…!

と、ずっと葛藤していた。


今日は北山くんの誕生日。
どうしても当日に「おめでとう」と言いたくて、北山くんに携帯番号を教えてもらった日から電話をかけることを計画していた。


私「よし!!もうどうにでもなれ…!」

ピッ

お昼が過ぎた頃、意を決して外線ボタンを押した私は、緊張で手に汗を握りながらコール音に耳を傾けた。


プルルルルル

プルルルルル

プルルルルル

プルルルッ


北「…はい」


で、でた!


私「あ、北山くん…?松井だけど…」

北「えっ、松井!?」

電話越しに聞く北山くんの声はなんだか別の人の声のようで、さらに緊張感が高まる。

私「そう!北山くんお誕生日おめでとう!!!」

勢いに任せて「おめでとう」と伝えると、

北「いきなりびびったわ!(笑)ありがとう!」

と、電話越しからでも笑顔なのが分かるくらい、嬉しそうな声で北山くんが言った。

私「どうしても当日におめでとうって言いたくて!…びっくりした?」

北「びっくりした(笑)でも嬉しいよ。ほんとにありがとう」

私「よかった」



北「……ストラップも、ありがとね。めっちゃ嬉しかったわ」

何を話したらいいか分からなくなってモジモジしていると、北山くんの方からストラップのことについて切り出された。


北「すぐ筆箱に付けた。携帯と迷ったけど」

私「つ、付けてくれたの?!嬉しすぎる!」

まさか学校の持ち物に付けてくれるとは思わなくて、思わず声が大きくなってしまう。

北「付けないわけねぇだろ(笑)携帯だと一緒に持てないから筆箱に付けたよ!松井も筆箱に付けろよな!」

私「うん!つける!!絶対つける!!」

照れ臭そうに命令する北山くんに胸がギューッとなりながら、ヘラヘラと締まりのない顔で返事をする私だった。


その後、緊張してなかなか電話をかけられなかったことや、ストラップを買うに至った経緯を話すと、北山くんは楽しそうに私の話しを聞いてくれた。


北「明日早く会いたいな」

私「わ、私も…!早く会いたい」


教室では普段通りだけど、2人で話す時は素直に気持ちをぶつけてくれる北山くんに、毎回ドキドキさせられる。



電話を切った後、私は筆箱に山程ついていたキューピーのストラップを外した。

鎌倉で買った大仏キューピーと、お揃いのハートのストラップ。一気に軽くなった筆箱に、その2つのストラップがキラキラと光って見えた。




written by ハチ

エピソード投稿者

ハチ

女性 投稿エピ 30