3学期を迎え、席替えで北山くんとうた、王子くんとハナがそれぞれ隣同士の席になった。
私は背の順で私の前にいる、なーちゃん(ノリがよくテンションが高い、夏菜さん似)と、アイコちゃん(ゴシップ大好きお嬢様、小沢真珠さん似)と同じ班になり、これがきっかけで休みの日も遊びに出掛けるほど2人と仲良くなる。
バレンタインデーも近付いてうたの家に集まった私たちは、休みの日に一緒にチョコを作ろう!とテーブルを囲い、計画を立てるためそれぞれ買い物メモを書いていた。
私は友達にあげる分しか作らないことを伝えると、うたもハナも驚いていた。
う「え、なんで?」
ハナ「もしかして私に遠慮してる?」
私「ちがう!私、好きな人がいるんだけど…チョコあげたら好きなのバレちゃうから、告白してから渡そうと思って」
う・ハ「「は?!誰!」」
うた「王ちゃんじゃないの?」
私「うん…違うの」
ハナ「え〜!!だれだれ?同じクラスの人?」
うた「意味わかんない、言えばいいじゃん。あたし達に隠し事するんだ?」
私「違うよごめん…!告白する前に本人に気付かれたくなかっただけ」
一気に機嫌が悪くなったうたにハッとしてすぐに謝ったが、
う「それってあたし達が言いふらすと思ってるってこと?」
と言い返されてしまい、チョコの話しどころではなくなってしまった。うたの機嫌は悪くなる一方だった。
私「……うたの近くにいる人だから、すぐに気付かれちゃうかなと思っただけだよ」
うた「へぇ〜」
仕方なく相手を特定できそうなことをあえて話すと、うたは私の目をジッと見つめて口だけで微笑んだ。
ハナ「うたの近くってことは…もしかして、北山?北山でしょ〜!?」
そんなうたのことなどお構いなしに、私の話しから相手を予想して興奮している様子のハナ。
私「……」
北山くんの名前が出て思わずニマニマしてしまう私を見て、きゃーきゃーとはしゃぐハナをうたが「うるさい」と嗜めた後、ポツリと呟いた。
うた「へぇ〜、王ちゃん可哀想。せっかく両思いだったのに」
ハナ「え?……ほんとに?」
シンと静まり返った部屋でみるみるうちに涙目になったハナが、うたと私を交互に見つめた。
うた「本人から聞いたってある人から聞いたんだ」
私「……でも、本人からは何も聞いてないよ」
うた「北山が嘘ついてるって言いたいの?」
私「そういう意味じゃないし!しかもその事は誰にも言うなって言ってたよね?」
うた「別にいいでしょ、ハナが黙ってればバレないんだから」
私「話さないでって約束なんだから、ハナに言ってる時点で約束破ってるじゃん」
うた「うざいんだけど。そもそもハチが王ちゃん好きじゃないとか言ってくるからいけないんじゃん」
ハナ「もう訳わかんない!!2人ともいつから知ってたの?知ってて何も言ってくれなかったの?ひどいじゃん…」
2人で言い合いになっていると、ハナが怒鳴りながらぽろぽろと泣き出した。すぐさま、うたがハナの背中をさすりながら優しい顔で語りかける。
うた「ハナ…ごめんね?内緒にしようとしてたわけじゃないんだよ?勝手にバラしたら王ちゃんも可哀想だし、言えなかっただけなんだ」
と懸命に慰めるうた。
“あいつなんて勝手に振られればいい”と言っていたのに、こんな時は誰よりも心配してるみたいな雰囲気を出すのが上手い。
私「前に聞いた話しだから、今の王子くんの気持ちは分からないけど…王子くんに好きな人がいるってことだけでもハナに言ってればよかった?」
ハナ「……私はそう思う。何も言ってくれないのはひどいと思う」
涙を拭いながら俯いたまま答えるハナ。
私「言わなくてごめん…でも、それ聞いてハナは王子くんのこと諦めたの?」
ハナ「それでもやっぱり大好きだから悲しいんじゃん…」
うわ〜んと泣きじゃくるハナの背中をさすり続けながら、
「諦めちゃだめだよ、ハナ頑張ってたじゃん…!あんなに王ちゃんと仲良くなれたんだよ?」
と言い聞かせるうた。
ハナ「……ぐすっ……諦めない…バレンタインに、王ちゃんに告白する」
うた「うん。ハチは分からないけど、あたしはハナの事、応援してるから」
私「…私も応援してる」
テーブルの向かい側で2人が寄り添う姿をぼんやり眺めながら、私はポツリと呟いた。
うた「へぇ〜、好きだったのに応援できるんだね?」
口調は優しいけれど、顔が全然笑っていないうた。
私「できるよ」
うた「その程度の気持ちだったんだ?」
私「…王子くんの事は好きだったけど、多分アイドルみたいな感じだった気がする。他の女の子が両想いになってもちゃんと応援できる」
「でも、今好きな人の事は、ほんとに誰にも渡したくないんだ。2人が相手でもぜったい応援できない」
うた「ふーん。そんなに北山の事好きなんだ」
私「うん…」
ハナ「うぅっ…ハチ〜〜!一緒に頑張ろうね!!」
2人の会話を聞いて、ハナが泣きながら私に抱きついてきた。傷付いたはずなのに「一緒に頑張ろう」と言ってくれたことが嬉しくて「ごめんね」と私も号泣した。
私「うたも、せっかく応援してくれてたのにごめんね…」
うた「別に。ハチ、北山といる時の方が楽しそうだし、好きなんだろうなって気付いてた。内緒にされるのはムカついたけど」
私「ほんとにごめん」
うた「泣かないの!もうあたしに隠し事しないでね…?」
さっきまでの怖い顔が嘘のように、一気ににこやかな表情に戻ったうたの顔を見て「ひとまず今日中に仲直りできてよかった」と心底ホッとした。
続
written by ハチ
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