北「王ちゃん、松井の事が好きなんだって」
私「…えっ!?」
北「シーッ!!ぜってー言うなよ?!」
本当?
いや、そんなわけない…
でも本当だったら?
いやいやいや!そんなはず…
私「……2人で私に嘘ついてるんでしょ?」
信じたい気持ちとすぐに信じられない気持ちで頭の中が忙しくて、でももし本当だったら…という気持ちから思わず顔がにやけてしまう。
北「そんな嘘つくわけねーだろ!」
私「ぜったい嘘ついてる!嘘だったら怒るから!」
うた「嘘じゃないって!ハチよかったじゃん!」
「…あの王ちゃんと両想いだよ!?おめでと♪(小声)」
事情を知っていたらしいうたが私の反応を見て、すかさず北山くんの隣からお祝いの言葉をくれた。
北「ま、そういうわけだからさ!どんどん話し掛けなよ!王ちゃん100%喜ぶから!」
満足げな表情で再び食事に手をつけ始めた北山くん。
私「……まさか、私が王子くんの事好きってこと王子くんに言った?!」
北「絶対言ってない!約束する!!」
私「よかった……」
まだ信じきれなくて、ぼんやりした頭で笑い声がする方を見てみると、相変わらずハナと王子くんが楽しそうに話している。
私「もしこの話しが本当だったら、ハナが告白する前にハナに話した方がいいのかな?」
ハナは好きになると分かりやすくて、熱心にアタックもするし、すぐに相手に告白するタイプだった。ライバルとはいえ、王子くんの気持ちを間接的にでも知った今、黙っているのもいけない気がした(今思うと大きなお世話)。
うた「え?別にアイツなんて勝手に告らせて振られればいいじゃん(笑)」
冷たい声で言い放つうたに「お前はまじで言い過ぎだぞ!」とチョップしてから北山くんがうーん、うーんと考え始めた。
北「梅沢にまで話し広めたのバレたら王ちゃんに絶交されるから、マジで誰にも言わないでほしい。でも複雑だな〜」
北「てかもう両想いなんだから、松井から告っちゃえば?」
考え込んだと思ったら、大したことないかのようにサラッと告白を提案してくる北山くんに、やっぱりそれしか方法はないのか…と少しだけがっかりした。
もしも王子くんが本当に私を好きだとしたら、きっとハナはフラれてしまう
だけどろくに話したことすらないのに、いきなり王子くんに告白できるほどの勇気や覚悟が私にはまだ足りなかった。
私「……なんか、もう諦めようかな」
北「は?なんで?!どーゆーこと?!」
うた「意味分かんないんだけど?!」
嬉しいはずなのに全力で喜べなくて、投げやりな気持ちになってしまった私の言葉に2人は揃って驚いた。
私「私も今までより話しかけづらくなっちゃったし、全然話したことないのにいきなり告白できるわけないし」
「本当に好きだったら、ハナみたいにどんどんアタックできそうだし…私のは好きとかじゃなかったのかも」
そもそも、好きとは?
うた「好きだから緊張して話せないんじゃないの?」
北「うんうん」
確かに他の男子とは普通に話せるのに、王子くん相手となると全く話せなくなる。
でも何で王子くんが好きなんだっけ?
何も取り柄のない私にとって、みんなから完璧と言われている王子くんはむしろ苦手な存在だった。
どうせ自分の事カッコイイとか思ってるんだろうな、と捻くれた気持ちで見ていた。
それが、女子からきゃーきゃー言われて耳まで真っ赤にして照れたり、怪我をして泣きそうな顔になったり、周りにのせられてふざけたのに毎回スベリがちだったり、案外クールじゃない姿を見た時に
意外と親しみやすい子なのかもしれない、と壁が剥がれたのがきっかけだった気がする。
私「いきなり告白は無理だけど、毎日1回話しかけてみる…!」
うた「よし!わたしはハチの味方だから!」
北「ヤベ〜、松井いきなり諦めるとか言うからどうなるかと思ったわ!…まぁ頑張れよ!」
私「ありがとう」
この件については誰にも話さない、3人の秘密にしようと約束して、朝食の時間が終わった。
続
written by ハチ
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