どうしようもなく好きだった。
好きにならなければよかったとすら思っていた。
彼に惚れてしまったのは、大学に入学したばかりの頃。
見学へ行ったサークルの、一つ上の先輩だった。
背が高くてすごく細身で、大人っぽくて。
お調子者なのに、時々紳士的で。
好きになるのは一瞬だった。
彼が纏う雰囲気に飲み込まれてしまったのだ。
とにかく好きで、どうにか近づきたかった。
もちろん彼がいるサークルに入った。
運良く帰る方向が同じだったので、帰るタイミングを彼に合わせて「先輩、一緒に帰りましょう」と誘う日々。
違う学科だから授業が被ることはなかったけれど、学内でいつ偶然会ってもいいようにと、前よりも身だしなみに気を配るようになった。
「なに今日、髪が違うじゃん。デート?笑」
「ちがいますー!たまたまですよ!そういう先輩こそ、ワックスつけすぎじゃないですか?」
「これは……!今日ちょっと寝坊してテンパったんだよ…」
学内が緑で溢れる頃には、気を使わずに話せる関係になった。
2人で出かける機会も何度かあって、もうこれは告白したら恋が叶うのかもしれない、なんて1人で浮かれていた。
事件が起きたのは、陽射しが鬱陶しくなってきたある日。
SNSで、彼に彼女が出来たことを知ったのだ。
相手は、彼と同じ学科の女の子。
私と同じ年のその子に告白され、彼がOKしたらしい。
スマホを傍に置いたまま、その日は泣き続けた。
泣いて泣いてひたすら涙を流して、こんなに好きになっていたんだ、と実感した。
けれど、彼女が出来てしまったからといって簡単に諦めることはできなかった。
written by 恋エピ公式
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