彼女と彼の恋愛日記

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俺の住む街にはケーキ屋さんがある。

素材の良さを活かし、シンプルなものから華やかなものまで揃っており遠方から来るファンも多い。

そしてここのお菓子を食べると幸せになれる…なんて噂もあったりする…らしい。

そこで看板娘として働く彼女に俺は、伝えなければならないことがありここにいる。

綺麗な亜麻色の髪、大きな瞳と…あの優しい笑顔。

初めてあの笑顔を見たのは半年前、雪が降る日。
学校帰りにベンチに座り込んでいた俺に声を掛けてくれたのが始まり。
好きな子に告白して振られて落ち込んでいた時、わざわざ声をかけて来てくれた。
生まれつき髪が明るく、目つきも良いとは言えない、おまけに背も高いから女の子からはモテないし男からはケンカを売られることもある。

俺の言葉を遮ることなく時々相槌を入れながら最後まで話を聞いてくれた彼女は、最後にマドレーヌをくれた。

「大丈夫、貴方は一途な人だから…きっと、そんな貴方を見てくれる人が現れるよ。」

マドレーヌは彼女みたいに優しい味がした。

私ここで働いてるんです、良かったらお店にも来てくださいね。

マドレーヌの袋には店の名前の書かれたラベルが貼られていたから、すぐにどこの店か分かった。

僕はどうしてもお礼が言いたかった。
それに…優しい彼女に僕は、恋をしてしまった。

しかしケーキ屋さんには女性客が多く、男子高校生が行くにはあまりにも煌びやかで足を踏み入れるのに戸惑っていた…気がつけば月日が経ち、半年も経ってしまった。

もう忘れられてしまっているかもしれない…。
男らしくないと分かってはいるけれど、諦める事はしたくなかった。

そんなとき駅前でハロウィンイベントのチラシが貼られているのを見た。
1年に一度の西洋の祭典、ハロウィン。
街にある店が集まりマルシェを開きハロウィンに因んだスイーツやお菓子を販売するらしい。
食べ歩きも出来るイベントである事も書いてあった。

そして出店店舗の中に彼女が働く店の名前を見つけた。


イベント当日

僕はイベント会場である公園に来ていた。
仮装している人もいれば、していない人…老若男女問わず人が行き交っていた。

入り口で貰ったパンフレットを片手に、僕は公園の中を歩きあの店の出店場所まで歩いていた。

思っていた通りの人の賑わいに、これならまだ話しかけるチャンスはあるかもしれない…そんな一縷の望みにかけて。

しかし気持ちとは裏腹にそこに彼女の姿はなく…休憩にでも行ってしまったのかと、視線を落として来た道を戻っていると不意に訪れた衝撃。
誰かとぶつかってしまったようで、咄嗟に顔を上げ謝罪をした。

そこに居たのは、彼女だった。

いつもの店の制服ではなく、ハロウィンらしい彼女の容姿を引き立てる様な服装。

「あの…すみません、大丈夫ですか?」

思わず見とれていると彼女が申し訳なさそうにこちらを見つめていた。

「っ…す、すみません、大丈夫です。」

おうむ返しのように彼女の問いかけに答え、突然の再会に内心どうしようと焦燥を覚えていると彼女はじっとこちらを見て口を開いた。

「…あのときの、公園でお話しした方ですよね?」


立ち話もなんだからと俺たちはマルシェの外れにあるベンチに腰掛けていた。

「ぶつかってしまってすみません…お兄さんも、イベントに来ていたんですね。」

「はい…って言うか、ここで話してて大丈夫ですか?」

「休憩時間なので…あの、あれから、大丈夫でしたか?その…」

髪を耳にかけていつか見た優しい笑みを浮かべて言葉を紡ぐ彼女。
あれから、と言うのは初めてあった日のことだろう。
気を遣ってか言葉を濁しながらも心配してくれる彼女にやはり人柄が優れているのだろうと思った。

「はい、お陰で立ち直れました…あのときは、ありがとうございました。」

マドレーヌ、美味しかったです。
思っていたよりはスッと言葉が出て来た。
彼女はと言うとその大きな瞳を微かに見開き、すぐに笑みを浮かべた。

「実は…私、お店を辞めようかずっと悩んでいたんです。」

「でも、自分のお菓子を食べて美味しいって言ってくれる人がいるのって、やっぱり幸せな事ですね。」

「今度は私が、救われちゃいましたね…年上なのに、なんだか恥ずかしいです。」

優しい微笑みはそのままこちらに言葉をかけてくれる彼女に、俺の脳内キャパは限界寸前だった。
何故辞めようと思っていたのか、彼女は一体幾つなのか?

「あ、あの…!」

何か次に繋げる言葉を探し口を開くも束の間、鳴り響く電子音に会話は遮られた。

どうやら彼女の携帯のアラームのようだ。

「いけない、もう戻らないと…お時間頂いてしまって、ありがとうございます。」

「い、いえ…こちらこそ…。」

「あの…良かったら、またお話ししたいので…今度お出かけしませんか?…あっ、もちろん、予定が合えば…!!」

「えっ!?いや、あの…お、俺でよければ…?」

突然の誘いに動揺しながらも何度か頷き言葉を返せば彼女は本当に嬉しそうに頬を染めて微笑み、ポケットからメモ帳とペンを取り出すとサラサラと何かを書いた。

「私の名前と連絡先です…連絡、待ってますね。」

両手で重ねるように俺にそれを手渡すとどこか名残惜しそうにその手を離し、ひらひらと手を振り彼女は人混みにかけて行った。

一瞬ではあったが長く感じた彼女の温もりと、先程までの時間が嘘ではないと言う証のメモ。

そして、あの赤く染まった頬と微笑みは…あれはまるで…。

written by 恋エピ公式

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恋エピ公式

秘密 投稿エピ 697

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