ただの後輩にきゅんとした話

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私は当時、高校3年生で演劇部に所属していました。
演劇部は3年生の文化祭で引退です。

今回の劇で引退をするせいか、文化祭で初めて役者を務めるせいか、緊張して今にも吐いてしまいそうなほどでした。
ステージの裏の隅でしばらく私はうずくまっていると、緊張していることを察してか、1つ下の男の後輩が声をかけてきました。

「一緒に頑張りましょう!」

彼は1番仲が良い後輩で、部活中もよく話し、部活後は1週間に1回ご飯を食べに行っていました。
距離は近いものの、後輩の一人といった感じで特別な感情を抱いたことはありませんでした。
今回の劇では私が演じるキャラクターのクラスメイトという設定です。
劇中、直接会話をするシーンはありませんが、よく同じ場所にいるという不思議な間柄でした。

彼が声をかけてくれた時は何も感じませんでしたが、気持ちがほぐれたのか、その後は緊張せず本番を迎えることが出来たのです。

無事に1時間の上演が終わり、カーテンコールをしました。
拍手喝采の中、幕が閉じ、閉じ切った瞬間疲れがどっと押し寄せてきました。

「これでお終いか~」と私が心の中で思い出を振り返ると、さっきまで私に笑顔で「一緒に頑張りましょう!」と声をかけてくれた後輩が泣いていました。

「先輩、これで引退なんですね。もう明日からいないんですね」と泣きじゃくっていました。
人前で泣きたくない性格の私ですが、そんな後輩の姿を見てうるっと来てしまいました。

私まで泣いてはいけない、ここは先輩としてしっかりしないと、とこらえ、
「泣くなよー!最後にハグしとく?」と腕を広げました。
すると、彼は一瞬だけ私を抱きしめました。

その一瞬に、私の心はときめいたのです。
きゅんと、久しぶりに感じた音でした。

2年間一緒にいて初めてみた姿と初めてのスキンシップは私の心を動かすには十分すぎる材料でした。
途端に彼がとても可愛くみえてしまいました。手放したくない、もう一度抱きしめたいという感情が芽生えたのです。
私たちは3回ほど一瞬だけのハグをし合いました。

その後、それ以上距離を縮めることなく私は卒業してしまいましたが、
彼とハグをした時のきゅんとした気持ちは今でも大切な思い出です。

written by 恋エピ公式

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秘密 投稿エピ 736

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