私が就職してしばらくしてからの話です。
友達からの紹介で出会ったのは大学生の彼でした。
話も楽しく、デートしたり友達以上恋人未満の穏やかな関係が続いてました。
わたしは彼のことを好きになっていましたが、彼の気持ちはわからないまま。
そんな彼が大学卒業する頃、電話が来ました。
それは親戚のツテで地方都市に就職が決まった、との話でした。
正直戸惑いましたが、彼女でもない私には何も言うことができず、
とうとう出発の日を迎えてしまいました。
「がんばってね」の言葉に彼は複雑そうな表情で「…ありがとう」と答えました。
笑顔で見送ろうと決めていた私でしたが、こらえきれず涙が出そうになりました。
その瞬間、彼は「バイバイっ」と冷たく言って後ろを向き新幹線に乗り込んでしまいました。
ーあっさりと終わってしまった恋でした。
月日は流れて、彼と会う事もなく私は別の人との結婚が決まりました。
そんな折、1通の手紙が届きました。
彼からでした。
手紙の内容は、知人から私の婚約を知り筆を取ったこと。
実は私のことが好きだったけど、彼も同様に、
私達の曖昧な関係や、社会的に未熟な立場で
ついてきて欲しいとも止めて欲しいとも言えなかったこと。
別れの瞬間、わたしの涙を見てしまい決断が鈍りそうになり、
冷たい態度で別れてしまったことの謝罪と、幸せになって欲しいと
書かれてありました。
私はなんとも言えない感情に涙が溢れました。
その後、私は婚約者の彼と結婚し幸せに暮らしています。
時々彼がどうしてるのか思い出しますが、ほろ苦い思い出です。
written by ふじさわのぞみ
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