隣の席の救世主【後編】

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隣の席の救世主【前編】の続きです



LINEの返信が来たのは数か月後でした。
文面からだけではありますが、元気がなさそうなのが伝わってきました。

その後も彼が学校に来ることはほぼありませんでした。
11月に数日登校しただけでした。
その時は会えたものの、ほとんど話せませんでした。
私も昼登校や欠席の多い、半不登校状態でありながらもまた学校で笑い合える日が来るように、
優くんが元気になれるように祈りながら待っていました。

そして優くんは私が困っていた時はさっと手を差し伸べてくれたのに対して、
私はLINEでも当たり障りのないことしか言えず、彼を助けることもできず、
ただ待つことしかできない自分が嫌でした。


月日は流れて高校2年の3月末、勉強用SNSで誰かにフォローされました。
確認すると、優くんの新しく作り直したアカウントでした。
その時、彼が留年したことと通信制高校に転校したことを知らされました。
彼がどんな気持ちで転校を決断したのだろうかと考えると辛かったです。
ですが環境を変えて心機一転頑張る彼を、直接会うことは出来なくとも応援しようと思いました。


高校3年に上がり、私は受験生になりました。
高校2年次に授業にまともに出席できてなかったので、
勉強はかなり遅れていました。

授業についていけないこと。受験の不安。生活リズムの不調。
そして1年たってもクラスに馴染めず浮いていた私は、
病気に理解の無いクラスの一部の人たちに高校2年のときから陰口を叩かれていました。
これらの原因で学校に行くのが段々億劫になり、卒業に関わる授業がある日以外は休むようになりました。

しかし勉強に対するやる気はあったので、家で独学で勉強していました。
その時も私は勉強用SNSはずっと更新し続けていました。
優くんもその頃勉強を頑張っていて、SNSを更新していました。
お互いの投稿によくコメントし合ってました。

体調が悪く勉強面もうまくいかなくてしんどかった時期に私がSNSで思いをこぼした時、
彼はまた支えてくれました。


3年生後半からメンタルや体調が良くなり、登校できる位まで回復しました。
ですが勉強の遅れはなかなか取り戻せず、受験勉強はうまくいきませんでした。
共通テストの結果が散々だった時や大学の個別試験の1次選抜で落ちてしまった時、
そして浪人を決めた時、優くんは前向きになれるような言葉を掛けてくれました。


受験が終わり、高校の卒業を控えた3月。
私は無事に卒業できることが決まりました。
そして、高校1年の時に休み時間や定期考査終わりに、よく対話型ゲームをしていたメンバー6人で
集まって遊ぶことになりました。
優くんも参加することになりました。
優くんとはSNS上ではよく話すものの、実際に会って話すのは高校2年の11月以来、
つまり1年4カ月ぶりでした。
優くんが来ることが決まった時、私は今までの感謝の気持ちを絶対に直接伝えると決めました。


そして当日を迎えました。
とある駅で集合だったので友達と共に電車に乗り、車内で立って喋ってました。
すると私の立っていた所のすぐ隣の座席に座っていた男性が急に立ち上がって話しかけてきました。


顔をあげると…なんと優くんでした。
たまたま同じ電車に乗っていたようです。


優「すぐ近くに座ってたのに全然気づかんかった!
  (友達と私の)会話の内容で分かったわ」

久しぶりに優くんに会うということで内心緊張していましたが、思わぬタイミングで再会したことに驚き、
緊張はどこかへ飛んでいきました。

そのまま一緒に集合する駅まで行きました。
駅に着きスマホを確認すると、その日遊ぶメンバー2人からLINEがきてました。


「すいませんちょっと遅れます!」
「俺も遅れる!」


また、ある子は集合時間になっても現れず、遅刻LINEもきていませんでした。
あとからその子は寝坊していたと分かりました。

3人でゆっくり話しながら待つか、と思っていた所、私の友達が昼食をまだ買っていなかったらしく、
「お昼買ってくるー」とコンビニへ行ってしまいました。



偶然が重なり重なって、6人で集合するはずが2人きりになりました。



私「いや~めっちゃ久しぶりよなあ!」
優「そやな!まあ会えてない時もLINEとかSNSとかで結構話してたけどな~」
私「まあな~。でも実際に会って話すの何年振りやろ?」
優「確か高2の秋に僕が学校行った時、選択科目の授業教室で会って話したよな?」
私「あーそうやったな!じゃあ…1年ちょいぶりか!」


伝えたい。ずっと直接言えなかった感謝の言葉を。


私「そういえば声ちょっと変わった?」
優「いやーそんなことはないと思うで。多分変わってないと思う」
私「あれ?しばらく会ってへんかったから声忘れちゃったんかなあ…?」


でもいざ言うとなると、気恥ずかしい。


私「いやぁ~…」
優「いやぁ~…」


再会の喜びの余韻で、感嘆しました。
無駄に意識していたのもあり、その後言葉が出てこなくなりました。


皆のいる前では話せない。言うなら今しかない。


私「……あのさ、次会った時にずっと直接言おうと思ってたことあるんやけど。」
優「ん?どした?」


なんとか発した自分の言葉が、告白前のそれに似ている気がして余計に意識させました。


私「……っ高1最後の時LINEで長文送ってくれたあん時あるやん???」


優「あの、ごめん早口過ぎて何言ってるか聞き取れんかった」
私「…っ!ごめん!ごめんって!!」


そういえば高1の時、優くんに私の早口な話し方をよく指摘されていました。
そんな頃もあったなと懐かしくなり、恥ずかしくなりながらも笑い合いました。


私「ごめん、ゆっくり話すわ。……ちょっとシリアスな話になるけどいい?」
優「ん?いいよ」
私「高1最後の、クラス変更決まった時長文LINE送ってくれたやん?あん時さ……」


優くんはクラス変更の件しか知らなかったけど、実は当時の私が人間関係でもしんどいことばかりで、
今までで一番苦しんでいたこと。

その時にあの長文LINEで、『独りじゃない』と思えるあの言葉で、思いがけず心が楽になったこと。

あの時の言葉がなかったら、今も私は立ち直れていなかったかもしれなかったこと。

高1の時から授業中起こしてくれたり励ましてくれたりして、助けてられていたこと。


2年もの間ずっと伝えたいと思っていた気持ちを、感謝の言葉を、やっと直接言えました。
優くんにいつも支えられてばかりで私は何もできなかったという後悔を感じながら。


優「そっかあ…。直接気持ちを伝えてくれて嬉しいわ。
  あの時声掛けててよかった。
  でも人間関係のこと知らずに声かけてたわ…ごめんな。」
私「いやいや!知らずに声掛けてくれてたけど、結果助けられてるから。」
優「ならよかった。
  
  あと僕も学校行ってなかったときにLINEで心配してくれたの嬉しかった。
  ありがとうな。」


優くんからお礼を言われたとき、
もしかしたら助けてもらってばかりではなく、ちょっとは私も彼を支えることが出来ていたのかなと
後悔が少し薄まった気がしました。
また彼の言葉に救われました。




高校1年に席替えで隣になったばかりの時、まさかここまで深い関係になるとは思いませんでした。

これから優くんは3年生で現役の受験生、そして私は浪人生。
志望校も同じなので、2人で次の春笑い合えるように頑張りたいです。


そして、二人無事受験を終えたら、次会えたら――

『ずっと直接言おうと思ってたこと』、
今度は、高1の時からずっと好きだったってことを、優くんに伝える。

written by どこにでもいるふつうの子

エピソード投稿者

恋エピ初心者です 皆さんのエピソードや漫画をみて心を潤わせてます(˘ω˘) 自身のエピソード投稿してます