最後のおはようございます

最後のおはようございます

「今日は風強いな〜前髪飛びそう」最近の私は早起きである。少しでも可愛いくなれるよう髪型に気を使い初めた。それは登下校の際にすれ違う1つ年上の先輩を好きになってしまったから。正直にいえば一目惚れである。クラスも名前も知らない、ただ通学途中に見かける先輩に私は恋をしてしまったのだ。どうにかして先輩に近づきたくて私は勇気をだして挨拶をしてみることにした。「おはようございます！」初対面の人からの挨拶に先輩は驚いていたが軽く会釈をして貰えた。よしっ！第1歩である。この日から私は毎朝挨拶を初めた。先輩は毎回顔を見て会釈を返してくれる。それだけで私は舞い上がってしまう。恋ってこんなにも人を変えてしまうんだと思った。

挨拶を初めて１ヶ月がすぎた頃、後ろから「おはよう」と声が聞こえた。なんと先輩である。先輩の方から挨拶をして貰えたのだ。少しだけ距離が縮まったように思えた。毎日毎日私たちは「おはよう」「おはようございます」を繰り返した。それ以外に話したことは1度もないし、きっと先輩は私の名前など知らない。それでも私に向かってくる「おはよう」で私は1日を元気に過ごせる。

そして、月日は流れ3月…先輩の卒業式の日になった。想いを伝えようと決めていた、「おはよう…」「おはようございます………」なんだかその日だけはお互い挨拶の後に空白の時間が流れた。その先に言葉があるような、お互いに何かを言いた気な雰囲気があった。しかし、伝えたい想いは喉元まで来ていたのに、私は先輩のことが好きだと伝えられなかった。

最後の最後まで「おはようございます」だけだった。

written by らん