好きな子には、とくべつ甘くなるみたい。

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花火大会に蓮也(レンヤ)くんと来たのは、
今日が初めて。

だから、嬉しくて胸がいっぱい!
のはず、だったのだけど……。


問題は、私がジュースを買いに行っている間に起きた。


蓮也くんは声をかけられたのか、
戻って来た時にはもうこのとおり。
見知らぬ女の子たち3人に囲まれていたのだ。


さっきまでのウキウキは消え、
今にも私の胸は不安で押しつぶされそうだった。


「そんなにカッコ良かったらモテるでしょ?」
「告白の数とかヤバそぉ~」

「いや、別に?モテないよ」


それでも、一切表情を変えず
淡々と答えるだけの蓮也くん。


女の子たちが言うように、
蓮也くんは本当にカッコイイから、
こうなるのもとくべつ珍しいことではない。


それでも、めげずに私から話しかけたりして。

やっと蓮也くんにふり向いてもらえた時は、
それはもう嬉しくて嬉しくて……。

1日中、涙が止まらなかったのを覚えている。


でも蓮也くんは、私と違って住む世界が別世界の人だ。


街を歩けば、すぐに周りから視線が集まるし、
つねにキラキラしたそんな人で。

彼女の私は、追いこうとするのでいつも必死。


つき合ってる分、毎日楽しいし幸せ、だけど。
不安なことも多いのは事実で。

今日みたいな出来事が、
これから先も少なくはないだろう。


そのたびに、私よりも好きな子が現れて、
いつか離れて行ってしまったら……
と考えるだけで、涙腺がゆるみそうになる。

蓮也くんを信じていないわけじゃないけれど……。


「ねぇお願い!一緒にまわろうよぉ」

「ごめんね。俺、彼女と来てるから」

「いいじゃん、ちょっとだけでいいから~。
付き合ってよ!」

「どうせ、今彼女と一緒にいないじゃん?」

「そうそう、隠せばバレないってぇ」


気安く腕をまきつけたり、
ベタベタと好き勝手さわる女の子たちに、
とうとう我慢の限界を超えたのか、
蓮也くんは険しげに眉をひそめた。


「……ちょっとしつこい、かな。」


急に変わる冷ややかなトーンに、
女の子たち全員が凍りついたように表情を固める。


「それに俺、彼女にしか興味ないから。
君らみたいな軽い子に誘われるほど、
俺も困ってないし。ナンパなら他渡ってくれる?」

「……っ、」


女の子たちは悔しそうに下唇を噛みしめると、
どこか遠くの方へと逃げるように行ってしまった。

そして、蓮也くんの視線がこちらに向く。


「……っ、!?」


どうやら隠れて見ていた私に、
蓮也くんはとっくに気づいていたらしく。

顔色を変えることのないまま、
こちらへとゆっくり歩いてくる。


「なにびっくりした顔してるの。
俺が行っちゃうとでも思った?」

「だ、だっ……て……」


どうしよう……。

蓮也くんの顔を見たら安心して、
今すぐにでも泣きそうになる。

思わず足元に俯くと、
蓮也くんは大きな手を私の頭にぽんと乗せた。


「行くわけないよ。言ったでしょ?
これからも、ずっと好きなのは莉咲(リサ)だけだって」

「っ、うん……」


涙目で顔を見上げると、
綺麗な長細い指で目の涙を拭ってくれた。


「ほら、泣かない。せっかくの可愛い顔が台無しだよ?」


そう言う蓮也くんの顔は、いとおしいほどに優しくて。

蓮也くんの手が触れた部分が、
屋台のリンゴ飴と同じ色に染まっていく気がした。


「蓮也くん優しすぎるから……泣きそう、」

「フハッ。なんだそれ。──んでも、
たしかに莉咲の言うとおり。そうかも」

「えっ?」


きょとんとしながら小首をかしげる私に、
蓮也くんは吸い込まれそうなほど綺麗な顔を近づける。

そして額に甘い口づけを落とすと、手を絡め合わせた。


「好きな子にはとくべつ甘くなるみたいだから、俺」


熱帯夜よりも熱々なセリフに、
おたがい照れくさくなって、
花火が上がる夜空の下でフタリ。


体を寄せ合い、唇を重ねたあと、
いつまでも笑い合ったのだった。


花火に負けないくらい、
とびきり明るい幸せな笑顔で──。

written by :*✿ひめりぃ✿*:

エピソード投稿者

:*✿ひめりぃ✿*:

女性 投稿エピ 41

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