君のことだけ見てるから 前編

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運命的な再会を果たした私と彼。
これは、そんな私たちの、高校入学後のお話です。

高2の夏、この日は、1泊2日の試合のために県外遠征に来ていました。
剣道の推薦を断り、普通科進学校に進学した私にとって、県外遠征はビッグイベント。
高校に入ってから出会った新しいチームメイトたちも、テンションMAX。
しかし、1番ワクワクしてるのは女子主将の私。
男子主将に聞かれても、女子エースに聞かれても、理由は内緒!
だってこの試合には、彼も来ているんです。

1日目は女子団体戦。
アップが終わり、時間を持て余していると、周囲がざわつきました。
振り返ると、翌日行われる男子団体戦の優勝候補チームが歩いてきました。
お揃いのTシャツ姿の彼らはかっこよく、キラキラしていました。
その中心にいるのが、彼でした。
彼は私に気づくとニコッと笑い、口パクで「スマホ」とか言って、通り過ぎました。
すぐに私のスマホが鳴り、
"久しぶり 頑張れ!"
と送ってくれました。
思わずニヤけてしまったのもつかの間、試合開始のアナウンスが流れます。

この日、私たち女子チームには大きな目標がありました。
それは、
"男子チームよりもいい結果を残すこと"
私の高校は強豪校ではないけど、私の同級生の男子メンバーは強く、監督の期待も彼らの方だけに寄せられていました。
なので、
"今回こそ女子チームも好成績を残そう!!"
と意気込んでいたのです。
そのために、ある作戦を立てていました。
それは、"大将である私に勝負を回す"というものでした。
初心者を抱える私たちのチームにとって、これは簡単なものではありません。
でも、みんなは全力で臨みました。
そして挑んだベスト8の壁。
作戦の甲斐あってか、勝負は私に回ってきて、僅差でしたが勝利することが出来ました。
ベスト4は逃したけど、みんな満足できる成績を残すことが出来ました。

試合のあと、早く彼に結果報告したくて探していると、監督に会いました。
監督は試合運営で忙しく、私たちの試合には付き添えていませんでした。
「ベスト8になりました!」
"やっと認めてもらえる!"
そう思って伝えた私でしたが、
「誰があの技を打てと言った?」
返ってきた言葉は、冷たいものでした。
「え…?」
「うちの部の強みは正々堂々と勝負することだろ?なのに、お前は逃げるような技を打った。恥ずかしくないのか?」
「みんなが繋いだ試合だったんです!だから、私、絶対勝とうって思って、本気で勝負したんです!」
あの時打った技は"逆胴"というものでした。確かに少し特殊な技ですが、きちんとした技です。
ただ、小学生の頃通っていた道場の得意技で、高校では剣風が合わず、使ったことはありませんでした。
「やっと勝ったんです!」
「そんな勝利はいらない。」
「…!?」
動揺して立ち尽くしていると、監督が驚いたように声を上げました。
「これはこれは…!どうかしましたか?」
振り返ると、彼が立っていました。
「あ、いえ…。」
不安そうに私を見る様子から、聞かれていたんだと分かりました。
「知り合いなのか?」
「同じ道場でした。」
「…!?」
私が答えると、監督はまた少し驚き、そして彼に興味津々といった様子で、私の方など見ようともせず、話しかけに行ってしまいます。
私は悲しくて、悔しくて、その場から立ち去ってしまいました。

その日の夜、私はホテルのロビーで1人で泣いていました。
喜んでいるみんなにこのことを伝えられるわけもなく、もうどうすればいいのかも分かりませんでした。
すると、彼が隣に座りました。
同じホテルなのは知っていたけど、あのあと、気まずくて話せていませんでした。
「俺は、あの技良かったと思うよ。」
試合を観ていてくれたことは嬉しかったけど、泣きすぎたせいで、声が出ませんでした。
「さくらがチームのこと1番に考えて試合したのは、みんな分かってるから、だから…」
「あなたに何がわかるのっ!?」
気づいたら、口走っていました。
「やっと認めてもらえるって思ったの。初めて、監督がこっち向いてくれるって思ったのに…!!なんにも変わらなかった。こんなことになるなら、最初から努力なんてしなきゃよかった…!!」
「そんなこと…」
「何も言わないでよ!!何も知らないんでしょ!?強くて、期待されて、明日だって、優勝するんでしょ?そんな人に分かることなんてないでしょ!!」
私の剣幕に驚き、言葉を失った彼を見て、取り返しのつかないことをしてしまったと悟りました。
「ごめん…。」
怖くて彼と目も合わせられず、逃げようと立ち上がった時、
「待てって…!!」
強く腕を掴まれ、そのまま抱き寄せられました。
「…!?」
「さくらっ!!」
「放して…!!」
しかし、彼の力は強く、私はされるがままです。
試合の疲労もあり、体は思うように動きません。
彼が何か言いかけたその時、
「あっ…。」
そこには私を探しに来たらしい私の部の子たちがいました。
「何やってんだよ…!?」
一緒に来ていた彼のチームメイトたちも、厳しく問い詰めます。
「ごめん…。」
さすがに彼も慌てた様子です。
私はどうしたらいいのか分からなくて、そのまま走り去ってしまいました。

written by さくら

エピソード投稿者

さくら

女性 投稿エピ 2

高3の女子です!! 現役剣道部やってます!