高校三年生の春、私と親友は失恋したばかりでした。
ふたりで毎日あの人のここが好きだった、なんて話をしながら慰めあっていました。
そんなある日の帰り道、私と同じクラスでわりと仲良しの男子が2人遠くを歩いていて、1人が私たちに気づき大声で声をかけてきました。私も大声で返して手を振りましたが、もう1人は目が悪いらしく、手を振りながら「誰ーーー!!!????」と聞いてきました。「いや、誰か分からんのに手振ってたんかい!!!」と全力でツッコミをいれると、隣の親友がしゃがみ込んで笑い始めました。
それから、私のクラスに遊びに来ては彼の姿を見て親友は「あ、あの面白い子だ」とニコニコするようになりました。
(お、これはもしや……?)と思った私は、毎日その男子と話したことや面白かったこと、授業中ゲームしてて先生にバレそうになってたことなどを報告しては親友に笑顔になってもらえたらなと思いました。
私の課題が終わらず親友含め友達数人で教室に残っていたときの事です。「あー、居残りしてる」と彼が教室に入ってきたのです。
「あれ、今日早く帰るって言ってなかった?◯◯くんも居残り?」
「いや急に生徒会の集まりがあって…」
「え、生徒会なの?」
「そうですけど??就職の為に一応生徒会の書記やってるけど辞めればよかった〜くそめんどくせぇの」
「生徒会あるまじき発言!笑」
「生徒会様は大変なんだぞ〜授業中ずっと寝てて課題終わらず残ってるようなおバカと違って忙しいんだぞ〜〜〜」
「え、悪口?????」
「よく分かったねえらいえらい。その調子で課題がんば〜」
そう言いながら手を振って帰っていく彼。そんなやり取りを見てお腹抱えて笑う親友。それにつられて他の友達も笑い出しました。
「ほんっと2人最高!」
「ほんと、こいつら毎日教室でこんな感じだよ」
「そうなのー?笑笑」
「え、そんな私達面白い???」
「え、逆に◯◯くんと話してて楽しくない?笑」
「いや、楽しい…けど…?」
「ねえねえ、」
「?」
親友が私の肩を叩きました。
「ちろるはさ、◯◯くんのこと好き?」
そう聞かれた瞬間、全身の血がブワッと一気に流れたように感じました。
いやいやいやいや!?1ミリもそんなの考えてなかったよ!!???むしろ親友ちゃんが好きかと思って毎日話してたのに!観察してたのに!!!
親友の話をきくと、全ては私の勘違いだった事がわかりました。
まず、親友ちゃんが毎日私のクラスに来ていたのは失恋した相手がこのクラスにいたこと。失恋はしたけどやっぱり好きで、私に会いに来るついでにこっそり見ていたらしい。簡単には諦められないよね、わかる。
そして彼を見てニコニコしていたのは、私達のやり取りが面白かったのと、たぶん私が彼を好きになりそうな予感がしたからとのこと。エスパーか?
「毎日楽しそうに私に報告してくるし、最初は違かったけどだんだん◯◯くんの話する時だけ女の子の顔になってたよ?」
「えぇ…」
「ちろるはさ、大好きだった先生も異動しちゃって居なくなっちゃったし、次の恋始めてもいいと思うよ?」
「…好きなのかな」
「顔真っ赤にして何言ってんの!?笑笑」
「そんな赤くないよ!!?」
その後、彼の事で頭がいっぱいで課題は思うように進まず。友達たちには怒られましたが、ずっとふわふわしていました。
好きになってたんだな、と自分でも分かるくらいには、彼のこと考えると体が熱くなりドキドキしていました。
次の日からはいつも通りに話すのが難しく、大変だったのを覚えています。
ただ、ありがたいことに気まずくならず、話す機会もたくさんありました。席も近く、背の順でも近く、テスト用の名前順の席も近く、ほぼずっと近くにいたからです。
仲が良かったので、遠足の班も一緒でライン下りやご飯作りも一緒にやりました。(水かけてきたり、私達だけ料理できないから2人で雑用してたり…)
夏の運動会では、それぞれ短距離走に選ばれてたので放課後残って2人で練習していました。(本番に頑張ろうなって肩を組まれた時は、近さと汗のにおいと彼の体温で心臓の音が伝わってないか心配なくらいドキドキしました)
秋の文化祭では私と友達のダンスに生徒会として協力してくれたり、忙しい合間を抜けて私達のところに来て、めっちゃ良かった!お前すごいのな!って褒めてくれたりしました。
そんなこんなで気づけば、クラスの中で少し噂になるくらいには、私と彼は仲良くなっていました。
つづく
written by ちろる
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恋多き乙女だったなぁ