学生生活最後の数ヶ月間、私達は念願叶って同棲をすることになりました。しかし、一緒に暮らし始めてから数週間後に私はある事に気付かされるのでした…
お互いにバイトも無く、まったりと寛いでいた、そんな日に彼はベッドの上で壁にもたれ掛かりながら座り、ゲームをしていました。
小腹が空く時間帯だったのもあり、私がおやつのお菓子を持って彼の元に帰ってくると、ゲームが一区切りついた彼がおいでおいでをしていました。彼的にはただ少し寒かっただけだったようですが、私はそのまま、体育座りのような格好でゲームをしている彼の両足の間に招き入れて貰いました。
しばらくはぼんやりとゲームを眺めていましたが、ふいにボス戦で力のこもりすぎた彼が前のめりになり、私も多少前のめりになりつつ、ちらっと先程よりも近くなった彼の首筋に目がいきました。
高校時代、女子達にも羨ましがられていた肌の白さは未だに健在で、(いいなぁ)なんて思いつつもぽけーっとしていましたが、その時、違和感を感じてボス戦に負けた彼と向かい合う姿勢をとり、首筋の匂いを嗅いでみました。
その後、彼の服の匂いも嗅いでみましたが、結果は同じでした。同棲前はとても好きだった彼の匂いがほとんど分からなくなっていたのです。
驚きつつもされるがままだった彼に理由を話すと、彼は私の匂いを軽く嗅いでから私の頭を軽く撫で、私を元の位置に戻してゲームを再開しました。
そんな出来後があってから、はや数ヶ月。就職の関係で入社から半年間だけお互いに離れて暮らす事になりました。
引っ越しを済ませ、入社して毎日忙しくなる前にと、引っ越しから1週間後に夜桜を見にドライブに出掛けることになりました。夜桜はとても綺麗で、飲み食いしながらのお花見は出来ないものの、十分に楽しい時間を過ごすことが出来ました。
久しぶりのバイバイの時間。同棲前と変わらずキスとハグを1度ずつしてくれた彼の体が離れる時、ふんわりとあの懐かしい香りが漂ってきました。
私は彼の匂いが再び感じられるようになったのが嬉しくて、思わず彼に報告をしてしまいました。私のする報告を聞いていた彼はにっこりと笑ってもう一度ハグをしてくれました。
近くにいる時は、頑張っても感じられなくなっていったものが、再び離れてみると驚くほどあっさりと感じられる事に切なさを感じつつ、どこからか風に吹かれて飛んできた桜の花びらを見上げました。
written by あや
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