片想い。

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私が高校生の時の話。

その年の春、私は高校2年生になりました。
吹奏楽部でフルートを吹いていて、なにより部活とフルートが大好きな女の子でした。
授業が終わると、大急ぎで音楽室へ。

今日は、一年生が新入部員として入ってくる日です。
どんな子が後輩になるのかな?仲良くなれるかな?
わくわくしながら部室へ向かいます。
フルートパートには、かわいい女の子が二人入りました。
明るくて、人懐っこくて仲良くなれそう!!
最初の印象通り、二人はとっても良い子で、フルートパートは今まで以上に団結して夏を迎えました。

夏休みには、吹奏楽コンクールという大きな大会があるため、夏が近づくと部活は缶詰め状態。
夏休みもほぼ毎日休みなく部活です。
春に入ってきた一年生も、どんどん上達していきます。
部全体の雰囲気もとてもよく、この夏のコンクールは期待できるかもとみんな張り切っていました。

そんななか、私は一人の男の子が気になっていました。
彼、福田くんは一年生で、トロンボーン担当。
中学校からの経験者で演奏も上手で、春に入部したのにもうトロンボーンパートのメインを担当していました。
気を散らしている場合じゃないのに…、と思いつつも目が彼を追ってしまう…。
幸い(?)夏休み中も毎日部活で会えるので、厳しい練習でもウキウキと通っていました。
トロンボーンパートには、福田くんと同じく経験者の美人な一年生の女の子、あかねがいました。
福田くんとあかねはいつも一緒。
しかも、いつもお互い厳しくチェックしあって練習していて、部内でも評判の練習熱心で上手なコンビでした。
周りから『つきあってるんじゃないの~?』とからかわれても、二人とも否定も肯定もせず笑っていて、なんだか大人のようにしっかりしたそしてお似合いの二人でした。
2年生なのに、いつもおちゃらけていた私は、福田くんのことが好きだなんて誰にも気づかれないようにこっそりと心にしまっていました。

コンクールも近づいて追い込みの夏合宿!
厳しい練習と暑さでみんなぐったり気味。
なんとか部内の雰囲気を盛り上げたくて、相変わらずおちゃらけて過ごしていた私。
わずかな休憩時間に、何人かで買い出しに出かけることになりました。
買い出しメンバーには、福田くんもいました。
大通りを通ると遠回りになるので、小さな川のそばの細道を抜けていくことに。


欄干のない小さな橋を渡っていた時。
私はぼんやりと福田くんに見とれていました。その時突然視界がぐらついて、気が付いたらそばの川に落ちていました!!
暑さで少し貧血を起こしたのか、一瞬何が起こったのかわからず座り込んだまま呆然としてしまいました。
川は深さはなくて膝くらいまででしたが、水面までが1メートルくらいの高さになっていました。
『ちょっとどうしたの?なにやってんの~!!』
いつもの私のキャラを知っている先輩やみんなは大爆笑!
幸い買ったものの中でもペットボトルのジュースを持っていたので、買い出しも無事です。
私もみんなにこたえて笑おうとするのですが、びっくりしたのと恥ずかしいのでいつもの調子で笑えません。
どうしよう…と思っていたら、一番前を歩いていたはずの福田くんが走ってくるのが見えました。
土手を回って河原に降りて、ばしゃばしゃと川の中に!!
そして私の手を引いて立たせてくれて『大丈夫?ケガしてない?』と爆笑するみんなをお構いなしに私をお姫様抱っこして道路まで運んでくれたのです!!!

結局福田くんには告白もできないまま、高校を卒業してしまいました。
その後、あかねは卒業するときに福田くんに告白したけど、振られたと聞きました。
私も勇気を出して、告白すればよかったなあ…。
切ない思い出です。








written by しろっぷ

エピソード投稿者

しろっぷ

女性 投稿エピ 8

実は結構な高齢(笑) むかーしの記憶を辿り綴っています。