明日天気になあれ

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これは、去年の夏の話ーー

私の名前は晴日(はるひ)。
今年の4月から、憧れの高校に入学することになりました。
中学では友達も彼氏もできなかった私は、高校3年間にすべてをかけていました。

長くてボサボサな髪の毛をミディアムヘアにカットして、髪を少し明るく染めて、カラコンもメイクも始めた。
今日から始まる夢の青春ライフ!
ワクワク気分で高校に入学したものの…

入学して3ヶ月が経っても、友達がひとりもできません。
私が思っていた以上に、周りの人たちはキラキラしていておしゃれな子たちばかりだったのです。

(私、もしかして浮いてる…?)

外見は変わったものの、内面はまだ中学の時のまま。
話しかけられるとどもってしまい、緊張して何も話せないのです。
気付いたら、ひとりになっていました。



キーンコーンカーン

(今日も一日が終わった!)
(早く家に帰って漫画読もうっと)

帰宅部だった私はまっすぐ家に帰るため、寄り道をせず駅へ向かった。

駅のホームで並んでいると、私の目の前に立っている男の子がキョロキョロあたりを見回していた。

(男子校生…怖い…)

別の列に移動しようとしたけれど、ちょうど電車が来てしまったのでそのまま乗ることにした。

(今日も一日疲れた…)
(誰とも話してないのになんでこんなに疲れるんだろう)

毎日、帰りの電車で考えることは同じだった。
空っぽな今日を振り返るばかり。
そして眠くなって、瞼を閉じるーー

ガタンゴトン

短いトンネルを抜けたのか、閉じた瞼から光を感じる。
そっと目を開けてみると、夕焼けの空がピンク色に染まっていた。

(わ…ブルーとピンクがグラデーションになっててすごい…)
(写真…撮りたいけど、恥ずかしいな)

周りを気にして夕焼けを撮ることもできない自分が、嫌になる。

パシャッ

すると隣から、シャッターの音が聞こえた。
振り向くと、端正な顔立ちの男の子が座っていた。

(あ、この人さっき目の前に立ってた人だ)

夕焼けに照らされ、髪が柔らかな茶色に染まっている。
サラサラの髪の毛を見ていると、目が合ってしまった。

私「あ、あ、すみません」
男の子「……」
(怪しい人だと思われた…!?)

自分の行いに後悔してると、男の子はゆっくりと口を開いた。

男の子「もしかして、君も夕焼け見てた?」
私「え…」
(この人…なんでわかったんだろう)
私「え、ええっと…7秒くらい前まではゆ、夕焼けを見ていました…」
(き、緊張してうまく話せない…)
男の子「あれ、ビーナスベルトっていうんだよね」
私「…へ、へぇ」
(そんな名前があるんだ、知らなかった)
男の子「明日も見れるといいなぁ」
私「あ…明日は雨みたいですけど…」
男の子「えー!」
男の子「そっかぁ…残念」

男の子は、しばらく黙ってしまった。

(あ…悪いこと言っちゃったかな)
(私ってなんでいつもうまくいかないんだろう)

私「雨、嫌ですよね…」
私「わ、私も…ここ最近ずっと雨が降り続けてるんです」
私「明日は晴れるかなとか思っても、なかなかやまなくて…」
男の子「……」
私「い、いつか晴れますかね…?」

(…って、初対面の人になに言ってるんだろう私)

私「ご、ごめんなさい変なこと言って…」
男の子「絶対晴れる」
私「え…?」
男の子「きっと今はまだ梅雨が明けてないだけで」
男の子「きっと晴れるよ」
男の子「梅雨が明けたら、太陽も出るしなんなら雨が降った後に虹を見るチャンスもあるかもしれないし」

太陽のように笑う男の子に、ドキッと胸が鳴った。

私「わ、私…虹が見たいです…」
男の子「うん、梅雨が明けるのが待ち遠しいね」

彼の言葉で、ザァーっと降り続けていた心の雨音が、ポツポツと小さくなっていく。

(私もいつか、虹を見ることができるかな…)

『次はー倉錦ー倉錦ー』

アナウンスが流れ、男の子が席を立つ。

(ここの駅なんだ。私の最寄り駅の2つ前だ)
(もっとお話したかった…)

男の子「じゃあ、また3号車で」
私「え…」

男の子はニコッと微笑むと電車を降りた。
プシューっとドアが閉まる。

(3号車…)

頭を巡らせ、はっとする。

(今乗ってる車両、3号車だ…)

私「また、会えるんだ」

電車に揺られながら、夕焼けを見つめる。
ピンク色に染まる空が、なんだが自分のように見えて愛おしくなった。

written by 雨くらげ

エピソード投稿者

雨くらげ

秘密 投稿エピ 2