あの日から私の時間は止まったまま。
君との思い出がないこの街で今日も生きてく。
「あれ、マネージャー珍しく明日休みなんですね」
「うん。ちょっと用事がね」
「えー!お土産待ってますね!!」
「はいはい、仕事頑張ったらね」
毎月27日。
私は休みをとる。
「お疲れ様ですマネージャー」
「霜月…」
「明日どこ行くんですか?」
「…デートなんだ。月一でしか会えないから」
そうやって笑いかけた私の顔をみて彼はいつもの無表情を少し崩した。泣きそうな悲しそうな顔をして。
「…俺じゃ…だめ…?」
「……お疲れ様」
煙草を消して喫煙所を出た。振り向かず彼に手を振り。
「ただいま」
バスで2時間揺られた私は少し高台にある丘にいた。
街が一望できる景色と共に色とりどりの花束を添える。
「あのね…この前仕事で失敗してね…」
溜まってた不安や愚痴を沢山喋る。返事なんてこないの分かってる。
「また来るね。…いってきます」
彫られた名前をなぞりそっと手を合わせる。
学生の時から付き合ってた彼は、ある日道端に飛び出した猫を助けようと駆け出して戻って来なかった。
それは彼からもらったパワーストーンが割れた日だった。
涙もでなくて、気がつけば私は大人になってしまった。
社会人になってから全てを忘れたくて仕事を一所懸命頑張った。それと共に眠るのが怖くなった。
眠る度に夢でみてしまう
幸せだった日々。
彼との思い出を。何度も何度も。
夢の中で笑いかける彼。初めて手を繋いでキスをした日。
頭を撫でてくれた大きな手の感触も。抱き締められた時に香った煙草と香水の匂いも。全部全部覚えてる。
忘れたい、忘れられない、忘れたくない。
「おはようございます」
私は今日も彼を思い出しながら笑顔を作る。
written by みゆみ
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私の短い人生の中で起きたまるで恋愛小説の様な体験を誰かと共有できたら嬉しいです。 小説サイトで活動してます。ただの社畜です。