不器用な帰り道

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「帰り道1人ってめっちゃ寂しいよな〜」
そう言って私の好きな人はため息をつきました。

 その日はテスト期間のため、私は放課後の教室に残って勉強をしていました。彼も含めてクラスメイト数人が教室で勉強している中、私と彼は会話を弾ませていました。
「じゃあ一緒に帰る?笑」
 私は彼のため息に冗談で返しました。彼も「ほんまに〜?笑」と返事を濁し、そのまま別の話題に変わってしまいました。

 下校時間になり、私は電車通学なので女友達と2人で並んで校門まで歩いていました。
すると自転車通学の彼が後ろから来て、私たちの隣までくると自転車から降りたのです。
「よかった、追いついた」
 そう言って微笑む彼に、私も友達も驚きが隠せませんでした。まさか本当に一緒に帰るとは思ってなかったです。
 彼、友達、私の順で横に並び3人で他愛もない話をして歩いていました。すると友達が「私、塾行くから、ここでバイバイするね」と言って、私と彼を2人きりにしてくれました。友達は「がんばってね!」と小声で私に言って、去っていきました。

 2人きりの帰り道。駅まであとたったの300mぐらい。
私はその道をゆっくり歩きました。彼は歩くのが少し早かったけれど、私に合わせてゆっくり歩いてくれました。
緊張と、会話を途切れさせないのに必死で、何を喋っていたのか覚えていないけど、何気ない会話をしていたら、あっという間に駅に着きました。
 ちょうどクリスマス前だったので、駅前はイルミネーションでキラキラと輝いていました。さすがに付き合ってもない男女2人で通るには恥ずかしくて、お互い黙って通り抜けました。

 イルミネーションを通り抜けるともうお別れの時間でした。
「ありがとう」と私が言うと、彼は「こちらこそ」と言ってはにかみました。
「帰り気をつけてね」
「おう!ありがとう」
 本当は電車が来るまで随分時間があったので、もう少し彼と一緒に話していたかったです。でも、これ以上遅くなると、彼を真っ暗の中自転車で帰らせることになるので、我慢して精一杯の笑顔で「バイバイ」と手を振りました。
彼も「バイバイ」と笑顔で手を振ってくれました。


初めて男の子と2人で帰った帰り道。
冷めない頬の熱。速い心臓の鼓動。
緩む口元と、嬉しさのあまり泣きそうな目。
これが現実だとは思えないほどに幸せな時間でした。

written by あめ

エピソード投稿者

あめ

女性 投稿エピ 12