好きになっちゃダメな人

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私と彼の出会いは社会人1年目の初日でした。
それまでの私は彼女のいる人を好きになったりと報われない恋をしていて、社会人になったらきちんとした恋愛をしようと思っていました。
職場で見た彼の第一印象は『カッコいいけどチャラそう』。
正直苦手なタイプでした。私の職場は初日からオリエンテーションがあるのですが、座席がすでに決められており、私の後ろの席が彼でした。
私『うわ〜、席あの人の前じゃん。チャラそうだし絶対話しかけてきそうだな〜。』
案の定、彼はたくさん話しかけてきました。
はじめは『これから同期になる人だし、ここで無視するのもなあ。』という、仕方ない気持ちで答えていましたが、徐々に会話も楽しくなってきました。また、たまたまアパートが近いということもあって初日から会話は弾みました。数日後、他の同期も誘って親睦会という名の飲み会が開かれました。そこでも彼は私の隣に座ってとても盛り上がりました。その二次会でのことです。ある同期の家で宅飲みをしていたのですが、そこで各々の恋愛事情の話題となりました。ある男性同期が彼に『彼女とかいるの〜?』とニヤニヤしながら聞くと、彼は『遠距離だけど2年くらい付き合ってる彼女いるよ。』と答えました。
この数日間で『もしかして彼は私に気があるんじゃないか』とかすかに思っていた私ですが、彼の言葉を聞いて自惚れていた自分が恥ずかしくなりました。
飲み会の帰り道、家が近いことから彼と一緒に帰っていましたが、彼から『〇〇ちゃん(私)って彼氏いるの?』と聞かれました。私が『いないよ〜』と答えると、『じゃあ俺立候補しちゃおうかな(笑)』と彼は言いました。彼女いるくせに何言ってんだろうこの人、と思いましたがやっぱりチャラい人なんだなと思い直しました。

しかしその後も彼は週末私を飲みに誘ったりして、はじめは戸惑いましたが徐々に週末彼と飲むことが習慣となりました。彼との会話は楽しく居心地の良いものでしたが、同時に『彼女のいる人なんだから好きにならないようにしないと』と自分に言い聞かせていました。しかしそう思えば思うほど、彼に惹かれている自分もいて『もしかしたら彼も…』と淡い期待を抱きながらも、彼女さんのことやこれまでの報われない恋愛を思い出し何とか好きにならないようにしていました。

そんな私が自分の気持ちにはっきり気付いたのは、職場でのことです。彼が同期の女の子と仲良く話しているところを見かけたのです。とても嫉妬しました。彼と一番仲が良いのは自分だと思っていたからです。その時、『私は彼のことを好きになっていたんだな。』と思いました。
ですが彼には彼女がいて、その事実は変わりません。
付き合うことはできなくてもせめて思い出だけと思い、『休日どこか遊びに行こう!』とダメ元で提案してみました。彼は一瞬困った顔をしましたが了承してくれました。
デート当日は本当に楽しくてやっぱり好きだなあと思うと同時に、彼女さんに申し訳ないなあという思いもありました。
本当はその日で諦めるつもりでしたが、やっぱり好きという気持ちが溢れてしまい、帰り道に『好き。』と一言言ってしまいました。
『振られる、これで終わりだ。』そう思いました。

しかし彼はしばらく考えてから真顔で
『知ってると思うけど、俺には彼女がいる。でも別れる。だから待っててほしい。』

…待つってどれくらい?
私のこといつから好きだったんだろう?
別れるって言いながらこのままズルズルいくんじゃないの?

色々な疑問はありましたが、結局は『…分かった。』としか言えずその日は終わりました。
それからの日々は地獄のように長く感じました。
不安が毎日頭をよぎり、そもそもなんで告白なんかしたのだろう。しなければ友だちとしていられたかもしれないのに、と後悔ばかりしていました。

そして告白から1週間後、彼から呼び出されました。
彼『昨日彼女とは別れた。付き合ってください。』
嬉しくて涙が出ました。
その後同期からも驚きはありましたが、みんな祝福してくれました。
あとから彼から聞いた話ですが、初めて会った日、彼は私に一目惚れして何とか付き合えないものかと頑張っていたそうです。一方彼女とは大学で出会い付き合うことになったそうですがあまり上手くいっておらず、就職を機に別れるつもりだったようです。
しかしなかなか別れ話を切り出す勇気がなく、ここまでズルズルしていたそう。

そんな彼なので、私が今度は彼女さんの立場にならないか不安な時期もありましたが先日、無事結婚し夫になりました。
今でも変わらず私を大切にしてくれています。

彼女さんに申し訳ない気持ちは今でももちろんあります。しかし勇気を出して告白して良かったと思っています。

written by いちこ

エピソード投稿者

いちこ

秘密 投稿エピ 1