チョコモナカアイスの君

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19歳の専門学校生時代、ある一人の男の子に出会いました。

私は、駅前のスーパーでレジのアルバイトをしていて、17時~22時の夕勤。休憩は僅か15分。
当時、専門学校に通いながら、外資系ホテルの清掃と、スーパーのレジの掛け持ちをしていて、
休む暇もなく、その休憩僅か15分は、休憩室でほとんど仮眠をしていました。
仮眠前に、チョコモナカのアイスを食べるのが日課で、勤務している日は毎回食べていました。

その日はあまりに疲れたので、アイスは食べずに椅子に座って、テーブルに顔を載せて、うつ伏せで寝ていました。
すると、急に、顔に冷たいものが当たりました。
「え?!何?!」と思い、振り向くと、一人の男の子が居ました。
男の子は「これ、良かったらどうぞ」と言い、私に差し出してくれたのは、私がいつも食べている、
チョコモナカのアイスでした。
それが彼との出会いでした。全然話したことが無いし、何なら見たことも無いかなというくらい記憶に無くて、
その時は、「良いんですか?ありがとうございます。」と御礼を言って、
彼はアイスの代金も要らないと言い、その場から少し離れた席に座りました。
私は遠慮なくその場で食べて、特に会話は無く、そのまま勤務を終了しました。
こんなこと今まで無かったし、何なら学生時代は毎日アルバイトばかりだったので、
戸惑いつつも、自分を見てくれてた方が居たんだ。。。と、とても温かい気持ちになりました。


また別の日、休憩室でその彼と遭遇しました。
先日の御礼を言い、この日は自分で予め購入したチョコモナカアイスを食べて、特に会話も無く、
そのまま終了しました。

そしてまた別の日、休憩室に入ると、今度は彼から話掛けられ、
休憩室の冷凍庫を開けると、ビニール袋に入った大量のチョコモナカアイスを見せてくれました。
彼は「良かったら食べて下さい」と言い、私は「こんなに沢山?!すみません!えっ?!何で?。。。
あ、ありがとうございます!」と驚き過ぎて、しどろもどろな返事をしてしまいました。
もちろん代金をお支払いしようとしましたが、要らないの一点張りで、最後まで彼の親切に甘えてしまいました。

それからは、休憩室で遭遇するたびに挨拶を交わし、冷凍庫のチョコモナカアイスを食べながら、
彼が売り場の品出し係であること、私とは同い年で、学校には事情があり通えていないこと等、たわいもない話をしたりして、少しづつ会話をするようになりました。
退勤時間が一緒になる時もあり、一緒に歩く帰り道は短いですが、話す時間がだんだん増えていきました。

とある退勤後の帰り道。私は、自分の連絡先を書いた紙を、ここ何日もポケットに忍ばせていました。
(・・・やっぱり迷惑かな。アルバイトばかりのこんな疲れた表情の私から貰ったら困るかな。勇気出したいけど、最近少し話するようになったからといって、私ちょっと調子に乗りすぎかな。どうしよう。。。)と、迷っている間に、別れる道に到着。

(今日も渡せなかった。。。)と思い、「じゃあまた!」と言うと、
彼が突然、自分のポケットから紙を私に差し出しました。
「これ、良かったら。。。連絡下さい。。。」それは、レシート裏に名前とメールアドレス、電話番号の書かれたものでした。
「あ、ありがとうございます!実は私も渡そうとしていました。。。」と言い、ずっとポケットで温めていた自分の連絡先を恥ずかしさ満点で渡しました。
この日は、アルバイトの疲れも吹っ飛ぶくらい、とても嬉しくて、嬉しすぎて全然眠れませんでした。

後日、初めて二人で食事に行くことになり、焼肉屋さんに行きました。
終始、私はドキドキしっぱなしで、思っていたよりあまり喋ることが出来ませんでした。
帰り道、ずいぶん遅い時間になり、「じゃあ、また!」と私が言うと、彼は「あ、あの!」と私を引き留めました。
「どうしたの?」と言うと、何か言いたげな、でも話しにくそうな感じの様子で、しばらく沈黙が続きました。
実は、この後私はどうしても見たいドラマがあり、自分の中でドラマ開始時間が迫っていて焦っていたので、
沈黙に耐え切れず、「本当にごめん、もう帰らなきゃいけないから、また今度ね!」と言い残して、
その場を去ってしまいました。彼が何を言おうとしたのか、少し気になりましたが、正直ドラマの方が気になってしまい、足早に帰宅しました。

その場を離れてから、2時間後くらいに、彼から突然電話が来ました。
今まで電話がかかってきたことは1度も無かったので、何か緊急事態かと思い、「どうしたの?!」と急いで電話に出ました。
すると彼から、「こんな遅くにごめん。。。実はさっき言いたいことがあったんだけど。。。」と言われ、
私も「さっきは本当にごめんね!」と謝罪をしました。
彼は、「実は。。君のことが好きなんだ。」と。。。
本当に嬉しかった。人生で初めて告白された、こんな私に、好意を持ってくれていた。それだけで、とても有難い。彼の一言で、急に胸のドキドキが止まらない。。。でも。。。
母子家庭で、自分の生活費と学費を稼ぐ毎日に、誰かと時間を共有する余裕が全くない。
すごく、すごく嬉しいけど、お気持ちだけ頂いて、丁重にお断りをしよう。。。
「ごめん、今は学校通うのと働くので手一杯で、誰かと付き合う余裕が無いんだ。。。好きと言ってくれて本当にありがとう。」
「うん、分かった。」
彼はその一言で、電話を切った。その日以降、私はアルバイトの時間をずらし、彼と会うことも無くなりました。

私は彼と電話したその日の夜、涙が止まらなかった。。。
自分にもう少し余裕があったら、何でドラマ見たさに足早に帰ってしまったのだろう、彼の勇気を何で受け止められなかったのだろう。。。とても後悔しました。

年月が過ぎ、今でもチョコモナカアイスを見るたびに彼を思い出します。
そして、素敵な青春をくれて、彼にありがとうと言いたい、
チョコモナカアイスの君を、私はこの先も忘れないだろう。


written by mari

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エピソード投稿者

mari

女性 投稿エピ 1

初めまして!皆さまの投稿を拝見して、こんな青春時代送りたかった~としみじみ痛感しているアラサーOLです(*^-^*)投稿エピソードは恥ずかしながら実話です!少しでも楽しんで頂ければ嬉しいです(^^)/