5年越しの恋

コンテンツ名とURLをコピーする

これは私が初めて恋をした話。

小さい頃からよく遊んでくれていた
近所のお兄さん、タケル。
10歳年上で大人っぽくて
短髪にメガネが良く似合う好青年だった

学校のこと、勉強のこと
友達のこと…

社会人だったタケルは
どんなに仕事が忙しくても私の話を
聞いてくれた。
思春期真っ只中の私は
そんな優しい彼を好きになるのに
時間はかからなかった。

休みが合えば、カラオケやドライブ
カフェ巡りに連れていってくれた。
とても楽しかったのを今でも覚えている

そして18歳の夏、ドライブの帰りに
私は思い切って気持ちを伝えた

「タケルの彼女になりたい」

彼は少し時間を置いて口を開いた

『はるの気持ちは凄く嬉しい。
俺も同じ気持ちだった』

『…でもごめん。はるはまだ18歳で
俺は大人なんだ。だから付き合えない、
本当にごめん…』

今にも泣きそうな表情で
彼は私にそう言った。
何か言わなきゃと頭の中で言葉を探して
やっと見つけた返事は

「聞いてくれてありがとう、
困らせてごめんね」

精一杯の笑顔を彼に向け
私は急いで車を降りた

遠くで私の名前を呼ぶ彼の声が聞こえる
私は振り返らず家まで走り続けた。


それからどれくらいの時間
泣いていたんだろう
目が腫れてヒリヒリする
携帯を見ても彼からの連絡はない

あぁ、気持ちを伝えなければ
まだ一緒に居れたのに

告白した事を後悔したまま
彼と連絡を取ることは無くなった。

それから3年が経ち、私には恋人ができた
喧嘩もするけど仲は良くて、きっとこの人と
結婚するんだと思っていた
けれど3年経ってもタケルの事を
忘れられなかった

そんな矢先、大地震が起きた。

震源地はタケルの住む家の近く…
心臓がバクバクと音を大きくする

どうか生きていて…無事でいて…

震災が起きた日から毎日
神様に願うことしか出来なかった

地震のニュースを食い入るように見て
ネットで被災者の名前を探し
タケルの名前が無いことを祈っていた


それから2年が経った。

少しずつ被災した地域は
復旧が進み、以前のような
落ち着いた生活に戻ってきていた。

きっとどこかで生きている
きっと無事なはずだと
どこかで安心していた。

あれからお付き合いしていた
彼と別れ、私はアルバイトに専念していた


そんなある日、友達と飲み会の帰りに
街中を1人で歩いていると

『はる!!!!』

背後から聞き覚えのある声で
私の名前を呼ばれた

振り返るとそこには前よりも
大人っぽくなったタケルがこちらに向かって
走っていた。

喜びと嬉しさで涙が溢れた

それを見たタケルは、
街中にも関わらず私を力強く抱きしめた

『ずっと…ずっと探してた。
会いたかった。生きてて良かった…』

嬉しそうなのに泣きそうな声で
彼は腕の力をぐっと強める。

「私も…会いたかった…
本当に生きてて良かった…」

溢れる涙を止められないまま
私は彼の背中に腕をまわした。


『5年前、告白してくれたのに断ってごめん。
俺、ずっと前からはるの事好きだったんだよ
でも付き合ってもし別れたら
もう会えなくなるのが嫌で、はるのこと
嫌いになりたくなくて、本当にごめん』

やっと聞けた彼の本音に
私は何も言えず首を横に振る事しか出来ない


『はる、俺の事覚えててくれた?』

彼の問に私は頷く

『はる。俺は、はるの事今でも好きだよ。
はるの気持ちを聞かせて』

私を抱きしめる腕がわずかに震えていた
私が小さく頷くと、
彼は両手で私の頬を包み込んだ

『だめ、ちゃんと言って。』

真っ直ぐな彼の目に私は逃げ場を失った

「…好きだよ。ずっと好きだよ。」

涙が邪魔をしてうまく話せない私を
昔と変わらない笑顔で彼は再び
ぐっと強く抱きしめた。

『今度は俺からちゃんと言わせて。』

『俺の彼女になってください。』


「…はい。」

私の返事に照れた彼の笑顔が
とても愛おしく思ったのを
今でもハッキリと覚えている。


それから彼とはもうすぐ
1年半を迎えようとしている。

会えなかった5年間を埋めるように
これまでの事もこれからの事も
彼と2人で沢山の想い出を
育んでいきたいとそう強く願っている。




written by はる

エピソード投稿者

はる

投稿エピ 3