金木犀の匂いがする秋のある放課後の日、合唱祭の練習がありありました。私は選抜合唱の伴奏者を担当していました。男女で別れ、それぞれ別々の教室で練習を行っていました。
初めは女子がいる教室で伴奏をし練習していました。みんなが先生の指揮に体と視線を向け、とてもいい雰囲気でした。その後、先生が「じゃあ···白月さん(私の仮名)、男子の教室の方に行ってもらっていい?そこで1回伴奏してきて」と言われました。そうなることは想定していましたが、1人で男子だけがいる教室へ行くのは流石に焦りました。さらに、先生は「職員室に用事があるから」と言ってどこかに行ってしまいました。
男子の教室の方へ行くと、みんな歌う練習をせずに好き勝手話しをしていました。40人近くいる中、私はピアノの方へ向かいました。その際に男子が「え?お前が伴奏者なの?」「弾けるの?笑」「白月さ〜ん頑張れ〜?笑」など、私に向けて色々な言葉が飛び交いました。私は「始めるよ···静かにして」など声をかけましたが、流石に40人もいる男子達に声が届かず·····。弾く勇気もなく、なかなかピアノを弾けず困っていると、後ろの方から男子が出てきて、私に「練習するんだよね?」と小声で声をかけてきて、頷いたらその男子が「みんな静かに!練習するよ!」と大声で言ってくれました。その男子は当時私が1番仲が良く、気になっている男子でした。佐竹(男子の仮名)君は普段、お調子者で決して真面目ではないのですが、その時の彼は私の目にかっこよく写りました。そして、指揮者がいなかったため そばにいたクラスメイトの橋本君(仮名)が私に伴奏始めちゃえ!っと口パクとジェスチャーで言ってくれ、私も弾く勇気が出て無事に練習を始めることができました。
橋本くんが私に弾く勇気をくれ、佐竹君がこの困った状況を変えてくれ、今でも思い出すと心が暖かくなります。2人には感謝しています。
written by shirotuky
Sponsored Link