雨が少し好きに思えた、この日の放課後。

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『凛月のやつ、傘わすれちゃったんだって』
『はは、どんくさー』
「仕方ないだろ、天気予報見るの忘れたんだから」


放課後。


ローファーに履き替えて昇降口の外に出てみれば、何やらむっとしている凛月(rituki)くんと、それを見て愉快にげらげらと笑う友達二人の姿が目に入った。


二人はこっちに一瞬目を向けるも、凛月くんだけは会話に夢中のようで、私が来たことには全く気づいていない様子。



『とか言って、本当はつむぎちゃんのに入れてもらうためにわざと持ってきてなかったりして』
「おま……、んなこと……!」
『うわ、めちゃめちゃありえるその推測』
「……んだから!お前らいい加減に!」

『ふふ、はいはい。そんな本気にならないの』
『そうだよー?こんなの軽いジョークじゃない』
「……誰のせいだと思って、」


3人のやり取りを微笑ましく見つめていると──


『ってことで悪いんだけどさ、つむぎちゃん。入れてあげてくんない?』
「えっ。は、はいっ、」


急に話を振られ、思わず返事に変な力が入る。


『ん、ありがとー』
『ってことで、じゃね。つむぎちゃん、凛月』
「あ、おい……!!」


そうして気を利かせてくれてなのか、凛月くんとふたりきりに。


二人の後ろ姿が小さくなったあと、少し気まずそうに凛月くんは私に視線を向けて、ひかえめがちに手をそっと前に差し出した。



「……持つよ、傘」
「……うん、お願いします、」



いつもの憂鬱な雨が少し好きに思えた、
この日の放課後──……。

written by :*✿ひめりぃ✿*:

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:*✿ひめりぃ✿*:

女性 投稿エピ 41

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