好きな気持ちを許してください

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高校生の時の私は、先生に恋をしていました。若くて細くて白くてヒョロヒョロで、生徒からはもやし先生と呼ばれナメられてる頼りなさそうな。そんな先生でした。
ナメられてるけどダメなことはダメと叱ってくれるし、誰も聞いてはいないけれど授業も優しくて分かりやすくて……
先生の担当する教科は高得点(他はほぼ赤点)、顧問をしているPC部に入部(機械音痴)するほど、私は先生のことが大好きでした。

とある日、授業中に男子生徒から「もやしこの間○○駅で彼女とデートしてたっしょ!!」とヤジが飛びました。先生は否定することもなく、「やめなさい、プライバシーの侵害だよ」と注意しました。
(あ、本当の話なんだ…)
再開された授業の黒板に書かれた、いつもより形の崩れた字を見て、サーッと現実に引き戻された感じがしました。
(そりゃあ、先生と生徒が〜なんて漫画の中だけだし、別にどうこうなりたかったわけじゃないし…)
意外と涙は出ませんでした。

先生を好きになって初めてのバレンタインデー。私は何故か(彼女がいるならキッパリ振ってくれる!告白しよう!!)と意気込んでいました。
初めて手作りで生チョコを作りました。
しかし当日、渡す直前に怖くなった私は箱の底に『ごめんなさい、先生の事が好きです。』と書いた紙を貼り、部員からのプレゼントと一緒に渡しました。

結局、その告白は気づかれることもなく。
そのまま何も変わらず1年が経ちました。

バレンタイン数日前、部員たちが先生に今年も来年もあげるね!と話していると「ありがとうな〜。でも来年はいるか分からないぞ?」と笑いながら返していました。

(こんなに好きな気持ちを、少しも気づいてくれないまま去っていくの?)
そう思ったら、直接言葉でぶつけるしかない!今度こそ告白してやる!!!とバレンタインデーにかけることにしました。

今年もまた生チョコにしました。先生が生チョコ美味しかったと言ってくれたから。
呼び出すのが怖くて、職員室の前で3時間ほどうろうろしていました。たぶん怪しい女だったと思います。
ついに決心して先生に声をかけました。
部員とは違うタイミングで渡しに来る私に、たぶん察していたであろう先生は、優しく笑いながらどうしたの?と聞いてくれました。
「先生のことが好きです」
恥ずかしいのと、言えたことが嬉しくて、泣きそうになりながらチョコを渡しました。
「ありがとう」
先生は少し困ったように、でもやはり優しい顔で受け取ってくれました。
そのまま職員室に帰っていく先生を見ながら、(好きを受けとってくれた…)と、許してくれたと。嬉しくて泣きました。返事のことなど、考えている余裕はありませんでした。

その年のホワイトデー、休み時間に廊下から先生が顔を出し私の名前を呼んで手招きしました。
きちんと正面に立ち、先生は私に「生チョコ美味しかった、去年も今年もありがとう」と言いながら小さく個包されているグミをくれました。私が受け取ると、続けて「好きって言ってくれて嬉しかった。でも俺は先生だ」と困ったように笑いながら言いました。その続きは聞きませんでした。
「ありがとうございました、先生」
私がそう言うと、ホッとしたように笑顔をみせてまた部活でな、と行ってしまいました。
きちんと失恋したんだな、と。すこしスッキリしていました。分かっていたことなので涙は出ませんでした。

そのまま春休みに入り、新学期。最後の学年。
私が大好きな先生は異動していて、この学校にはいませんでした。
授業の先生が違う、顧問も違う、職員室の席にも違う人が座っている。
気づいたら号泣していました。
見ているだけで良かったのに、これ以上の関係なんて望まないから、せめて私の卒業まで見届けてほしかった。どうして、どうして。

告白して振られて、スッキリしたはずなのに…
目の前からいなくなってはじめて、失恋を実感しました。

きっと、あの時の私は先生への恋心に罪悪感があり、許されたかった、好きでいることを受け入れてほしかったんだと思います。

あれから7年経つ今でも、たまに思い出してはまだ先生してるのかなー、彼女と結婚したかなーなんて考えてしまいます。

先生、なんの取り柄もない地味な私に、青春をありがとうございました。
だいすきでした。

written by ちろる

エピソード投稿者

ちろる

女性 投稿エピ 5

恋多き乙女だったなぁ