私の彼はモテる。
容姿も頭脳も運動神経もクラスに留まらず、学年、更には学校でもトップクラスにいい。
対して私は普通も普通。大した特技もなくてそこそこ友達のいるただの高校2年生。
でも私は彼と付き合っている。優しい彼の心に私が惚れて、私から普通の告白をして、何故かOKを貰った。それからは私だけ浮ついてるみたいで、夢の中にいるみたいで、自分だけ別のおとぎ話の中にいるような、なんとも言えない気持ちで。
でも、そのおとぎ話は一瞬で現実に戻された。私と付き合っていると知っていても構わず彼に接近するのだ。
当然だ。
私は凡人の何色とも言えない女の子。
私は自分を卑下するしかない。
そうだ。彼は魅力的なのだ。容姿も、頭脳も、運動神経も、…まっすぐな優しさも…こんなにすばらしい人、私は知らない。君に出会うまでの私も、君とずっと、ずっと一緒にいたい未来の私も、君以上の人なんて、いないよ。絶対、いないよ!
でも、口にはできない。そんなこと、私にはできない。
そのとき、彼が私じゃない女子に1歩近づいた。制服を大袈裟に着崩した、可愛らしい女子だった。
彼と私と、1歩分の距離ができた。
だめだよ、行かないでよ。君は私だけの彼氏なんだよ?
言えるわけが無い。重いし、ワガママだし、なにより、君を縛りつけたくない。
でも、抑えられないんだ。
離したくない。重くっても、ワガママでも、伝えないよりマシだ。
わたしはそっと、君の袖をつかんだ。
他の女の子のところに行って欲しくないんだよ。君と1歩分の距離でも離れたくないんだよ。言えない。とても言葉には出来ないけど、伝わってるといいな。
君は言った。
「大丈夫だよ。一緒にいるから。」
君の5本の指が、私の髪に触れた。
そう言った君の顔は、ちょっとだけ笑ってるように見えた。
written by きゃるてぃん
Sponsored Link
面白くも感動するエピソードを投稿していきたいです!