勇気のなかったあの頃の私へ

勇気のなかったあの頃の私へ

私が高校１年のときのお話です。入学してすぐのグループ活動で一緒になった通路を挟んで隣の席になった彼と、授業の予習をきっかけにすぐに仲良くなりました。

毎日朝起きてラインをし、寝る前にラインをし、授業のノートや課題をお互いに教えあい見せ合うような関係でした。面白く、気さくな彼のことが次第に気になり、思いを寄せるようになりました。当時合唱部だった私は、部室の窓から野球部だった彼の練習を見ながら部活をしていた思い出があります。休日の部活でも、彼の野球姿を見るととてもドキドキしていました。
彼とは、ラインの中でも頻繁に「好きな人教えて」「教えなきゃノート見せないよ」などと言い合うようになり、彼はふざけて「君が好き笑」と言ってくることがありましたが、彼の独特のユーモアさから、冗談だとばかり思っていました。
そのうちに、私と彼の仲の良さから、クラスでは好きなの？付き合っているんでしょ？と聞かれることが多くなりましたが、自分の気持ちに素直になることもできず、彼は本当に私を好きなのか、私は彼のことが好きなのか余計にわからなくなっていました。

そんな中で、忘れられない放課後があります。
雨が降る日、いつものようにクラスでのホームルームを終えて部活に行くと、「今日部活？終わったら連絡して」とラインが。いつもは忙しい野球部だったため、部活後に会えることなど滅多になく、舞い上がっていた私は、すぐに「今終わった！」と連絡すると「玄関にいる」との返事。すぐにいきましたが、その日はあいにくの雨。私は親に車で迎えに来てもらうように頼んでいました。彼はそれを聞くと少し残念そうにし、私の迎えが来るまで玄関で一緒に待っていてくれました。不思議と緊張してしまい、お互い無言の時間でしたが、せっかく待っていてくれたのに申し訳ないという気持ちでいっぱいでした。その日は何事もなくお互いに分かれ、家に帰りました。

その後、お互いに部活や勉強が忙しくなり、連絡を取ることは減り、そのうちに疎遠となっていきました。今は連絡を取っていませんが、お互い別の道を歩んでいます。もしあの日、私が迎えではなければ途中まで一緒に帰ることができて、何か進展ができていたのかな…と想像することもあります。
今でも、雨の日になるとあの頃の気持ちを思い出し、彼とのラインを見返しても、やはり私は彼のことが好きだったんだなと思うのです。あの時にはもう戻れないけれど、いつか同窓会で会ったら、当時みたいに勇気のない私ではなく、勇気を出してあの頃「本当は好きだったよ」と彼に伝えたいと思っています。

written by むむ