目が合う彼へ バレンタイン作戦

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私には高校の時に片思いした同級生がいました。
彼は入学式でピアノの演奏をしていました。
私は全く知らなかったのですが、彼を昔から知っていた友だちはイケメンでピアノもできて、才色兼備だと言っていました。
私はその時はそうなんだとぐらいにしか思っていませんでした。
お互いのクラスも違ったので、なんの接点もありません。


しかし入学して半年くらい経ったあるとき、私は気づきました。
私と彼はどちらもそれぞれお互いの友人と帰るため、C組のクラスの前で終わるのを毎日待っていたんです。
彼も私と同じく帰宅部でした。
私は私の友人と帰り、彼は彼の友人と帰ります。
一回も話したことがないのに、近くにいて途中まで一緒に帰るというなんともへんな感じです。
そしてその頃から登校時間もチャイムギリギリなのに彼とかぶりました。

そんな偶然から次第に彼を意識するようになりました。
そして彼とその頃からちょくちょく目が合うようになったのです。

最初は恥ずかしくてすぐ顔を反らしていました。
でもなんだか嬉しくてだんだんと自然と笑みがこぼれるようになりました。
もちろん顔を反らした後ですが。
同じように彼も反らした後に笑ってくれるようになりました。
それからは彼を見つけては目が合うことが続きました。

全校集会で集まる時。
廊下ですれ違う、ずっと前の、遠くにいる時。
わざと教科書を忘れて、友だちへ借りに彼のクラスまで見に行った時。

長い廊下で私と彼がお互いにすれ違った後に、彼が同じタイミングで振り返ってくれた時は、ドキドキして一時授業に集中できませんでした。

しかし学年が上に上がるとだんだん下校時間は被らないことが重なって、彼を見かけることがなくなっていきました。


煮え切らなくなった私はついに2年の冬、決心しました。
バレンタインデーに彼にチョコをこっそり渡そうと。

でも私は授業の発言する時でさえ、声が震えないか心配するぐらい臆病でした。
人気の彼を好きになっていることを他の人に知られることがとても恥ずかしかったのです。
おこがましいとみんなに思われはしないかと。その後ずっと茶化されるのではないかと。

なのでチョコに自分の名前は書けませんでした。

そんな私に他のクラスの教室の中に入る勇気はもちろんないため、一番目立たなく渡せる方法を考えました。
私が朝早く学校に来ているといつも遅刻する前ギリギリなのにおかしすぎます。

私は1ヶ月前から作戦を練り、前日13日の放課後、遅くまで残って、下校の時に彼のくつ箱にチョコをこっそり入れると決めたのです。
しかし彼の出席番号が分かりません。
1月ごろから彼の教室の廊下にあるロッカーの棚を横目でこっそりと偵察し、一週間かけて彼の出席番号を見つけました!
これで彼のくつ箱にチョコを入れられます!

13日になりました。

私にみんながほぼ下校するまで図書館でなんとなく本を探すふりをして時間を潰しました。しかし遅くなってきたので、ついに帰ろうと決め、くつ箱まできました。

後ろから下駄箱に誰も来ないことを確認して、彼の出席番号を見つけ、開けると、彼の名前が書いたスリッパがありました。
彼がすでに下校していることと、名前が一致したことにほっとして、その横にチョコを置きました。
そして何もなかったかのようにささっと帰りました。

次の日、私はいつもよりほんの少し、15分だけ早く登校しました。
彼と登校時間が被らないようにです。
ちょうど試験の日だったので少し早いくらいでは試験前勉強で早めに来る人も多いため、誰も気になりません。
しかし私は試験どころではありません。
彼がチョコをもう見たかもしれないと思うとそれだけでドキドキしていました。
そしてなんとか試験を終わらせました。

試験後、彼に会わないようにさっさと帰ろうと思っていたら、
なんと帰ろうと生徒がごった返す廊下から彼がこっちへ来るではありませんか。

しかし彼は私の顔を見たとたん、顔を真っ赤にして、元来た道をくるっと引き返していきました。

私はびっくりしました。彼がチョコを私からだと思ってくれたことに。
そしていつも目が合うたびに爽やかに笑顔を返してきていたので、こういうことには余裕しゃくしゃくだと思っていたのに。
私がうれしさであっけにとられているうちに彼の後ろ姿は見えなくなりました。


大人になったいまでも彼の真っ赤になった顔は鮮明に焼き付いています。

written by ブルーリボン

エピソード投稿者

ブルーリボン

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