君っていう選択肢

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小学4年生の時、私は空手を習っていました。
ある日、稽古の休憩時間中に、当時一緒に空手をしていた女友達の弟君と2人で恋バナをしていました。
「ゆうき(弟君の仮名)は好きな人いるの?」
「いるよ!」
「え!もしかしてこの道場にいる感じ!?」
「…うん」
ゆうきはその時小学2年生で、わんぱくな元気少年でした。そんなゆうきが少し恥ずかしそうに頷いたので、私は誰が好きなのか気になりました。
「ん〜誰かな。じゃあ名前言っていくから、当たってたら言ってね!」
「うん、わかった」
当てると言っても、当時その道場で空手を習っていた女子は私を入れて7人だけだったので、1人ずつ名前を言っていきました。
「じゃあ〇〇ちゃん!」
「ちがう」
「⬜︎⬜︎ちゃん?」
「ちがう」
順番に言っていき、残ったのはゆうきのお姉ちゃんの名前だけでした。
「もしかしてこゆきちゃん!?(ゆうきの姉の仮名)」
「ちがうに決まってるじゃん」
「え、じゃあ誰なの!?」
もう全員の名前を言い終えてしまった。私にはゆうきが誰を好きなのかさっぱりわからなくて、お手上げでした。ゆうきは少し間を開けてから私の方をゆっくり見つめてきました。
「……君っていう選択肢はないの?」
「…………えっ?」
「俺、君のことが好きなんだけど」
実は私は自分を除いた6人の女子の名前を言った。
ゆうきの好きな人が私じゃないと思っていたから。
でもあまりにもまっすぐに私を見つめるその目は嘘を言っているようには見えなくて、私は咄嗟に目を逸らしてしまいました。
「よーし!組手するから休憩終わり!」
師範のその一言で生徒たちが一斉に整列し始めた。私たちも慌てて整列し、その日はそのままゆうきと話すことなく終わった。


その後もお互いあの時のことは何も触れず、何事もなかったかのように、今まで通り普通に喋って笑い合い、気まずくなったりすることはありませんでした。
私はあの告白の返事をしないまま空手を辞めてしまったけど、小2とは思えないあのまっすぐな告白は、今でも忘れられない素敵な思い出です。

written by あめ

エピソード投稿者

あめ

女性 投稿エピ 12