私は小学生の頃、1年に1回くらい告白されるくらいはモテモテな日々を送っていました。しかし私はそれをことごとく断っていました。それは、ずっと大好きな幼なじみがいたからです。その幼なじみはあまり冴えなくて、図書室に入り浸っては本ばかり読んでいる陰キャ系男子。でも私たちはいつも一緒に登校し、一緒に下校して、仲良くしていました。
何か特別なことをしなくても、いつも私に優しく接してくれる彼のことを、いつしか好きになっていました。
彼は特に目立つ訳でもないので、奪われることも無いだろうと、毎日を気楽に過ごしていました。これから先もずっとこんな感じがいいな。そう思っていました。
しかし、中学生になってから、彼は変わりました。目にかかるくらい長い髪の毛を切り、メガネをコンタクトに変え、見違えるようなイケメンになったのです。
たちまち彼は女の子の憧れの的になりました。それでも私は危機感を持ちませんでした。彼は小学生の頃の私と同じように、告白は全て断っていました。今思うと恥ずかしいのですが、それを私は、私のことが好きだから断っていると思い込んでいました。しかし、ある日その考えは打ち砕かれました。
ある日曜日、友達との待ち合わせ場所に行く途中に、彼が女の子と歩いているのを見てしまったのです。
魔法が解けたような気持ちになりました。私はなんて自惚れたことを考えていたのだろう。その場で思わずへたりこんでしまいました。
その後なんとか待ち合わせ場所にたどり着いた私は、友達にさっきの事を話しました。帰り際には、友達の腕に抱きついて、ただ彼の名前を呟いて泣いていました。そこで私はこう思いました。
私の彼は、誰にも渡したくない。と。
私は変わりました。幸い彼の趣味は変わっていなかったため、私は彼が読んでいるのと同じ本を読みました。また、休日には仲の良い男子に手伝ってもらい、電話口で彼についての多くのアドバイスを貰いました。
そして時はバレンタインデー。多くの女子が彼に本命チョコを渡す中、私はなかなかチョコを渡せないでいました。もちろんこのチョコは本命。そして今日、告白しよう。そういう決心で今日学校に来ました。
しかし、アプローチされっぱなしの彼。一緒に帰ろうとしたんですが、彼は女子に囲まれてて近寄れない私。前までの私だったらここで諦めて友達を誘って帰るところだったと思います。
でも、
私は抑えきれませんでした。もう止まりませんでした。彼は私だけの彼だ!
彼の手を握って、無言で引っ張って、帰りました。この時の私は、ただ赤く茹だったような顔で、彼だけしか見れない状態だったと思います。彼の「待って」という一言で、ようやく手を離した私。我に戻って、謝ろうと振り返ると
同じように顔を赤らめた彼がこちらを見つめていました。
私は暫くぼーっとしてから、カバンに入れていたチョコを取り出しました。
「これチョコ」とだけ言って渡しました。彼はありがとうと言ったあと、ある一言を言いました。
「本命?」
私は茹でダコのように顔を赤らめてしまいました。でも、彼のその一言は、なにか、切ないような、すがるような声にも聞こえました。私はしばらくの沈黙のあと
「大好き」
返答になってそうでなってない一言を、俯きながら言いました。あー、だめだ私。練習までしたのに全然違うじゃん。こんな一言で全部の想いが伝わるわけないのに。そう心の中で呟いた直後、
彼の両手が、私の背中を包み込みました。
「遅いんだよ、ばーか」
そう言われました。私は自然と流れ出てくる涙を他所に、愛を叫び続けました。
「この前あなたが女の子とデートしてるところを見て、奪われたくないって思ったの。本当に好きなの、大好き、大好き」
彼は私を抱きしめながらこう続けました。
「俺もずっと好きだった。多分、お前が見たのは、クラスの女子に街中で無理やり捕まえられた時、、、だと思う。心配させてごめん。」
彼はその後、思いもよらないことを言いました。
「お前、よく男友達と電話してたろ?ほら、俺たちの家隣同士で、窓空いてれば結構音とか聞こえてきて。この前仲良さげに話してるとこ聞いちゃって、本当に胸が苦しかった。でも、よかった。本当によかった。」
「これからもずっとそばにいてくれ。」
その言葉のあと、私の唇は、柔らかい彼の唇に包み込まれました。
written by きゃるてぃん
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