言えなくなる前に

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わたしが社会人になる前の最後の春休みのこと。

バイト先の塾の後輩講師に、とても人懐っこくて仲の良い人がいました。
元々受験生としてそこに通っていた彼が、大学生になって講師として帰ってきて3年。

帰ってきてくれた当初は、わたしは嬉しくて、よく喋っていました。しかし、わたしは学年が上がるごとに学校が忙しくなり、基本土曜のみというシフトに変更したため、平日がメインシフトの彼とはなかなか会うことがなく、講習期間や研修でしか会えませんでした。

会えば必ず他愛のない話で盛り上がって、はじめは、仲の良い後輩の1人…だったのに。
うちのバイト先では、帰る前に必ず全体のシフト表を見て、次のシフトの確認をします。
そこで知らず知らずのうちに、彼の名字を探してる自分がいました。そして、シフトが被っていれば密かに内心喜んでました。

この感情は何だ…!?と1人で悶々と考えてるうちに、「これは《好き》なんだ…!!」という感情に気付いた時にはもう、わたしはバイト卒業が目前に。


いやでも、この感情をどう処理すべきか…密かな恋心として内に秘めとくべきか、言葉にして相手に伝えるべきか。
「もう卒業ですね、でもまたご飯誘いますよ、みんなで行きましょうね!」そう彼は言ってくれてましたが、そんなことがない限り、卒業したらもう会えることはないかもしれない…。わたしは今までの恋愛を全部片想いで終わらせてしまって、後悔したことも数知れず…。そんなのは嫌だ、もう後悔したくない!!そう心に決めました。


そうと決まれば、毎日カレンダーとにらめっこ。

何日も考えて日にちを逆算した結果、告白を決めた日の週末に伝えないといけないということが発覚。


そしてその週末。

バイトが終了後にわたしと彼と、もう1人の後輩とカラオケオールすることに。緊張しすぎて、何を歌ったかもう覚えていません。

「お疲れー!」オールが明けて各々帰ることに。駅の改札で彼と2人。違う方面なので、ここしか言うところはありません。

わたし「ねえ」
彼「はい」
わたし「ごめん、始発乗れんかもしれんけどいい…?」
彼「どうしたんですか(笑)」
わたし「ほんとは、追いコンの時に言おうと思ってたけど人多いし、きっとわたしは恥ずかしくて言えないと思うから今言うね。…好きです」
彼「…!!」

この時の彼の表情は今でも忘れられません。びっくりのような恥ずかしいような、そんな表情でした。

わたし「ごめん、びっくりするよね、でも…返事はほしい、いつまでも待つから、返事は…ちょうだい」
彼「…わかりました、お返事はちゃんと会える日に伝えます」
わたし「わかった、ありがとう。お疲れ様」
彼「お疲れ様です」


その夜。彼から「明日会えませんか?お返事したいです」とのLINEが。次の日会うことに。

バイト先では滅多に着なかったスカートを履いて、目一杯おしゃれしてご飯へ。

ドキドキ高鳴る胸を抑えながら待ち合わせ場所へ。

わたし「お待たせ」
彼「いえ、全然」

沈黙をどうにかしなきゃと思ったわたしは

わたし「こんな早くお返事もらえると思わんかったよ(笑)」

と笑って言うと

彼「それなんですけど…、僕で良ければお願いします」
わたし「…!!こちらこそ、お願いします」

彼はまた少し照れ臭そうに返事をくれました。

記念日はひな祭りの日。
もうすぐ付き合って1年です。

written by しず

エピソード投稿者

しず

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