『ひと夏』

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いつも遠くの席からあなたの横顔を眺めていた。

真剣な眼差しで黒板を見つめる顔。

休み時間に周りの男友達と雑談してはじける笑顔。

前の席の、私の友達のあの子と仲良く談笑する顔。

私はいつも遠くから眺めるだけ。それ以上はいつも勇気が出なかった。

でもある時チャンスが来た。

『今年の夏休み、花火大会に行きてーよな!』

あなたがそう言っていた。

私はあなたと一緒に行けたら・・・なんてことを考えていた。

『じゃあ、私とあの子と、あなたとあなたの友達と4人で出かけよう!』

友達は私を指差し、そう答えた。

遠くで固まる私。その後、徐々に頬に熱を帯びていくのが分かる。

あなたは私の席まで来て、笑顔を私に向けて

『俺と一緒に花火大会行ってくれる?』

と聞いてきた。震えそうになる声を抑えて私は『一緒に行きたい!』とそう答えた。


今日は花火大会当日。慣れない浴衣をお母さんに着付けてもらい、友達には髪を結ってもらった。

『これは私からのお守り。今日のあなたは最高に可愛いから大丈夫!』

友達から髪飾りのプレゼント。勇気をもらい、私は出かけた。


いつも眺めているだけだった私。いつも輝いているあなたを見ているだけだった。

今日は花火大会。いつもとは違う非日常。昼間の熱気が徐々に下がり、もうすぐ夜が来る。

あなたはどんな顔するかな?

あなたはなんていうかな?

今日だけ特別。輝いている私を見て。

あなたに恋している私を見て。

written by あもん

エピソード投稿者

あもん

男性 投稿エピ 11

「聞いて目の前に浮かぶ、ショートストーリー」を目指して、頑張って作ります。