僕の手の役目

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彼を好きになって、まだ付き合っていない頃。夜景を見にドライブに誘った。彼は免許をとりたてで運転には自信がなく、普段から車で通学しているわたしが運転して行った。夜景スポットである頂上付近の駐車場に車を停め、外に出ると空気はかなり冷え込んでて、吐く息も白かった。ドライブということもあり、コートこそ来ていたものの、防寒はできておらず、わたしはあまりの寒さにポッケに手を突っ込んで震えていた。すると彼はわたしのポッケに入れて、そっと手を握った。
彼の手はとっても暖かく、思わず「あったかい」というと、彼は「僕の手はさきちゃんの手を温めるためにあるんだよ」といって微笑んだ後、そっと手を引いて、突然、ギュッと抱きしめられた。その時ばかりは寒さも忘れてずっとここでこうしてたいって思った。
そのあと夜景だけでなく、星も眺めていたら、そっと後ろから抱きしめて、大好きだよ。と言う彼。続けて、僕と一緒に楽しいことたくさん見つけに行こうって。
その冬からずっと、彼の手はわたしの手を温めてくれています。趣味の楽器演奏で硬くなった指先もプリントで切って痛む指も、緊張しての汗ばむ手もどんな手も優しく包んでくれています。

written by Sakiti

エピソード投稿者

Sakiti

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