中三の文化祭で、私は全校生徒の前でスピーチをすることになりました。舞台袖で出番を待っていた時、当然ながらものすごく緊張していたのを覚えています。
多すぎるほど深呼吸をしていたら、放送委員で音響機器の近くにいた当時の彼氏(以下M)が、私に声をかけてきました。Mが発した言葉は「お前、外科医にでもなればいいんじゃない?」でした。意図も意味もわからなくて「どういうこと?」と返すと、私が血を見れないことを理由に挙げ、しかも現場で怖がっている私を想像するのが楽しいとまで言いました。今はスピーチ直前の準備がしたいのにふざけるな!と思いました。実際「何言ってんの?」と言ったほどです。その直後、Mが突然「これでもう平気かな?」と言って微笑みました。
そう言われて初めて理解しました。
彼は私の緊張をほぐそうとしてくれたのだと。それで無関係なことを言ったのだと。
人をいじるのが好きな意地悪な男の子。それがMだと思っていました。でもその優しさに初めて触れた瞬間だったのでついキュンとして、思わず抱きついてしまいました。
真っ赤な顔をした彼に見送られて出た舞台でしたスピーチは、大成功に終わりました。
written by ふぉるて
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