数年越しの告白

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小学5年生の時、初めて好きな男の子ができた。同じクラス、しかも保健委員会が一緒で、昼休みの当番や委員会でよく話していた。
お互い「仲良し」というのは認識していて、周りからも「2人とも仲いいね!」と言われた。その時は告白する気もなく、ただなんとなく幸せな時間を過ごしていた。
そして6年生になり、クラスも委員会も別になってしまった。5年生の時よりも話す時間は減ったけど、靴箱で会った時や廊下で会った時は相変わらず仲良く話していた。
2月になった頃、仲の良かった友達から「このままでいいの?告白したら?」と言われ、私は手作りのチョコを渡すことにした。
バレンタイン当日、ドキドキしながら、彼の靴箱にチョコと「好き」と書いたメッセージカードを入れ、彼が来る前に家に帰った。
次の日、朝早く登校して、彼の靴箱を確認すると、私の入れたチョコは靴箱の奥に置かれていた。受け取って貰えなかった。…その日はずっと悲しい気持ちだった。
それ以来、なんとなく気まずくなり、話すことがないまま卒業式を迎えた。
中学校に上がり、クラスが一緒になった。私はやっぱり彼のことが好きで、心の中で喜んだが、彼は中学生になってから私に対して素っ気なくなってしまった。最初はショックだったが、部活や勉強が忙しくなるうちに、彼を好きだという気持ちは薄れてしまった。
そうして時は流れ、私たちは中学校を卒業した。高校は別だったため、彼への気持ちは高校で完全に消えてしまった。
彼と再会したのは、成人式の日だった。成人式の後、中学校の同窓会があり、そこに彼も出席していた。たまたま席が隣になり、数年ぶりに話すことになった。
「久しぶり」
「元気にしてた?」
気まずくなってからずっと話していなかったため、お互い緊張していた。
どういう話題を話せばいいのか分からない、と私が困っていた時、彼は静かに口を開いた。
「ずっと謝りたいことがあったんだ。…小6の時、バレンタインのチョコ。靴箱に入れてくれたじゃん?」
私はその話題が出てくるとは思わず、目を見開いて彼を見た。
「入れた…けど、次の日靴箱に入ったままだったから、断られたんだなって思ったよ」
「うん、本当は、本当は嬉しかったんだ。同じ気持ちだったんだなって。…でも、恥ずかしくて、持って帰れなかった」
彼はそう言って、「ずっと後悔してた」と付け加えた。
そう言われて、「あぁ、両思いだったんだ」と思った。何か胸のつっかえが取れた気がした。
「え、じゃあ何で、中学で急に冷たくなったの?」
お酒を飲んでいたこともあり、その場の勢いでもう一つ気になっていたことを聞いてみた。
「あれは…なんか、中学になって、周りがすっごい騒ぐようになったから。冷やかされるのが嫌で…恥ずかしかったんだ」
彼は気まずそうにそう答えた。
あぁ、ちゃんと、私達は両思いだったんだな。
「そっか…私、嫌われたと思ってたよ。嫌われてなかったんだね」
ホッとした気持ちでそう言って、彼と笑った。
「私もね、恥ずかしくてちゃんと言えなかったんだ。あの時、好きだったよ」
当時は言えなかった告白を、数年越しにすることができた。
「うん、ありがとう。俺もあの時、好きだったよ。勇気を出せなくてごめん」
そこからはお互いの高校時代の話で盛り上がった。何かが始まった訳では無い。ただ、2人でスッキリとした気持ちになった。
この時以来、私はできるだけ後悔しないように行動している。「しない後悔よりする後悔」という言葉にもあるように、迷ったら行動すべきなのだと思う。
隣には、私から告白した相手がいる。私は今、とても幸せだ。

written by まつり

エピソード投稿者

まつり

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