つらい入院を2人の愛で乗り越えて

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彼とは大学生の時に付き合いだして、卒業後に同棲を始めました。
お互い仕事に追われながらも、とっても幸せな生活を送っていました。
そんな夏のある日、帰宅後にわたしが突然の体調不良に襲われ、急激に容体が悪化、彼に救急車を呼んでもらって搬送される事態に。
その日はそのまま意識が戻らず、昏睡状態のまま入院することになってしまいました。
あとで看護師さんに聞いた話では、検査をしても原因がわからないまま高熱が続き、1ヶ月近く昏睡状態だったそうです。
その間、彼は仕事を終えると必ず毎日病室に来ては夜中まで寄り添って、手を握ったり頭を撫でたりしながら、
ときどき小声で「大丈夫だよ」「きっと良くなるから」と語りかけてくれていたそうです。
そんな日が続いていたある日、彼の声に気がついて薄っすらと目を開けたら、目の前に彼がいて、泣きながら抱きしめられました。
当の本人には何が起こったのかよくわかりませんでしたが(笑)。
真夏なのに澄んだ空気の中にいるようなすがすがしい感じがして、それから彼とゆっくりだけどいっぱい話をしました。
「焦らず、ゆっくりとでいいから、ご飯たべて、リハビリして、退院したら色んな所に遊びに行こう!」
彼と久しぶりに笑顔で語り合うことができ、希望に満ちた日々でした。
(退院したら、結婚したいな)
心の底からそう想いました。
でも、日を追うごとにわたしの顔から笑顔が消えてゆきました。
いつまで経っても体が食事を受け付けなくて、点滴頼みの日々が延々と続きました。
意識が戻った日からひと月以上経ってもベッドから降りて立てないし、治す気力が沸かないのです。
それでも彼は必ず毎日病室に来て、話をしてくれました。
その頃になると、わたしはただただ彼の話を聞いて、コクンとうなづいてるだけの状態になっていました。
時々、すぅーっと眠くなって目を閉じると、彼は目に涙を溜めながら私の頬をさすってくれました。
(もうこれ以上、彼を悲しませたくない。)
(彼には幸せになって欲しい。)
そういう想いが日に日に募った、秋のある日。
「じゃあ、そろそろ帰るね。ゆっくり休んでね。また明日。」
そう言って、彼がいつものように私の額にキスをして帰ろうとした時、わたしは力の入らない手で彼のそで口を弱々しくつかむと、それに気づいた彼が再び寄り添ってきてくれて、「どうしたの?」と優しく微笑んでくれました。
わたしは、これですべてを終わらせることができるね、という安堵感から、すーっと体の力が抜けて、
「もういいよ・・・。」「いままでありがとう・・・。」
と心から言うことができました。
驚いたように大きく見開いた彼の目からは大粒の涙が零れ落ちて、「そんなのだめだよっ!」と言うと、カバンから1枚の紙を取り出してわたしの前に広げました。
「結婚しよう!」
そう言って、わたしの手にペンを握らせ、
「2人で一緒に病気治そう!」「ゆっくりでいいから。元気になったら式を挙げよう!」
と、ぎゅっとわたしにペンを握らせて、その手を添えたまま2人でゆっくりと婚姻届にわたしの名前を書きました。
わたしは泣き笑いながら、
「式なんて、いつになるかわかんないよ?」
そう言って、病室のベッドの上で2人で抱き合いながらキスしました。

それからというもの、彼から生きる目標をもらったわたしは、辛い食事やリハビリにも耐え、みるみる回復を遂げて、クリスマスには元気に退院することができました。
そして翌年にはささやかながら幸せな結婚式を挙げることができました。

written by みひろ

エピソード投稿者

みひろ

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