太陽のような笑顔

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小学校4年生のころだったと思います。
体育会の終わりの時だったでしょうか、校庭で先生の話を聞いていると、後ろからちょんちょん、とからかってくる同じクラスの男の子がいました。内容は覚えていませんが「ばーか!」とかなんとか、ムッとすることを言われたような気がします。
それから何故だかその男の子が気になって。
特に関わったり、話したりはなかったけれど、見つめてしまい目が合えば、彼は小学生ぽくないちょっと意地悪な微笑みをわたしに向けてました。(すごく色気があったんですよ!)
そんなよくわからないけど気になる日々が続いて、わたしが移動教室からひとり、自分のクラスに戻りドアを開けようとすると男の子が数人で、クラスの女の子の誰が可愛いとか、ウワサをしている声が聞こえました。
うわ、っと思いドアを開けるのを止め、隠れながらその話を聞いていると
「(わたし)はどう?」「うーん、なんかある?」とわたしの話題になってしまい、気になってドアの隙間からちょろっと覗くと、その気になる男の子と目が合いました。
そして、やっぱり意地悪な微笑みを浮かべて「おもしろい」と男の子たちに言い、チラッと覗いているわたしを見ました。
おもしろいってなによ、可愛いの方がいいしー!と心の中で叫んで、ドキドキを隠すのに必死でした。
それからは気になる男の子だったのが、好きな男の子になり、奥手なわたしはさらに話したりすることができなくなりました。
自分では行動を起こせなくて、悩み、当時母とキリスト教に通っていたので神父様に相談をしたのです。
神父様は、神様にお願いしてみなさいと助言してくれました。
その夜から、「次の席替えで隣の席になれますように」と祈り始めました。
そして席替えの時、くじを引いた最初は違う男の子と隣になったのですが、目の悪い子を前の席にしたりと調整する中で、なんと。その好きな男の子と隣になれたのです。
もうビックリして、嬉しい気持ちを隠すのに精一杯で変な顔になっていたんでしょうね。
「お前か!なんかすごい変な顔してるけど」
と言われ、…完璧に印象が変な子になりました。
それからというもの、ドキドキとおっちょこちょいなわたしの性格のせいで、忘れ物をして筆記用具を借りたり、教科書を見せてもらったり、先生の説明とは逆なことをしてしまったり、ダメな不思議ちゃん確定なわたしをフッと笑う彼。
好かれたいのに上手くできない自分にショックでしたし、普通ならこの子と隣の席ヤダなーと思うところもあって仕方ないはずです。
でも、わたしがどんな失敗をしても笑って、ちょっと落ち込んで下を向いていれば覗き込んで笑ってくれる。
さらに、周りの子たちはなんとなく隣同士の机を離して給食などを食べていて、わたしもそれに倣っていたら「なんでくっつけないの?」と言って机をドンッと寄せてきてくれる。
こんなわたし、と自分を低評価している時に、彼のくれる優しさはとても嬉しかったです。
そんな隣同士の期間も1ヶ月くらいで終わり、席が離れて、またあまり話せない日々が始まります。
募っていく恋心は隠せなくて、でも直接告白できるほど勇気はなくて、悩んでばかりでした。
でも、どうしても伝えたいと思ったのです。
好き、という気持ちだけじゃなくて、優しくしてくれてありがとう、あの意地悪な笑顔が嬉しかったと。
そして勇気を振り絞ってお手紙を書きました。

「好き、好き、大好き。
優しくしてくれて、助けてくれてありがとう。
でもこの手紙のこと、誰にも言わないでね!
言ったら怒るからね!」

手紙は、彼の机に潜ませました。
帰りの時間の前にひっそりと。

そしてそれに気づいて、開けて読む彼を離れた後ろの席でチラッと気にしながら見ていると、
グルッと振り返った彼はわたしを見て、いつもの意地悪な笑顔とは違った、驚きながらも柔らかい笑顔を向けてくれたのです。
わたしはその笑顔が嬉し過ぎて、でも恥ずかしくてすぐに俯いてしまいました。
彼はなにも言わず、ランドセルの中にゆっくり手紙をしまい、帰って行きました。

それから、ラブレターもらった!とか、彼のこと好きなんだって?とかからかわれることもなく。
誰にも言わないでね、と書いたわたしの約束を守っていてくれていました。

返事を聞きたかったけれど、たぶん覚えてはいないのですが、返事はいらないと、気持ちを伝えたいだけだと手紙に書いたのでしょう。

目が合えば、以前の意地悪な笑顔じゃなく、太陽のような暖かい笑顔をくれました。
それだけでわたしは幸せになれたし、なにより小学生だったので、告白の後の発展の仕方がわからなく、どうしようもありませんでした。

その後、わたしが別の小学校に行くことが決まり、これで会えなくなってしまうのかと思い、
学校の最後の日、彼とすれ違う時、呼んでみたかった彼の名前。でもそれは恥ずかしくて、苗字の岩越から取って「岩ちゃん!」と思いを込めて呼んでみました。
彼はやっぱりグルッと振り返って太陽を背中に、あたたかい笑顔をくれました。
そしてまたね、と心の中で言いました。

学区が同じなので小学校が離れても中学校は同じになるなと思い、会えるのを楽しみにしていましたが、彼は6年生の時に引っ越してしまったと友達から聞きました。
あれからずっと会えないままですが、優しい太陽の熱を感じると彼の笑顔を思い出します。
いつかまた
あの太陽のような笑顔に会えたらいいな

written by パヌ

エピソード投稿者

パヌ

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