私と彼女の話(後編)

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彼女と付き合ってから、二度目の冬を迎えました。

私は腰ほどまでに長かった髪を短く切りました。
ずっと憧れていたボブヘアーになることが出来て、さっぱりした気持ちでした。

彼女にも気に入ってもらえるだろうか、そんな気持ちでその日私は彼女に会いに行きました。

初めて出会ったバーに向かい、彼女の後ろ姿を見つけて直ぐに声をかけました。
しかし、私を見た彼女の反応は思っていたものとは違いました。

私の顔を…いえ、髪を見て、少し目を見開き驚きと戸惑いを隠せない様子でした。
その反応に戸惑うもつかの間、すぐに彼女は私の髪に手を伸ばし優しい言葉で髪型を褒めてくれました。

彼女の反応に納得出来ない部分はあったものの、深く追求してはいけない気がして、私は何も言えませんでした。

その頃から、少しずつ彼女は変わっていった。

会えない日が続き、会えない日には必ずと言っていいほどしていた通話の頻度が減りました。
けれど年末ということもあり、仕事が忙しいのだろうと思いあまり気に留めない様にしていました。

そして…クリスマス。
仕事を終えたその日、私は彼女と会う約束をしていました。
告白されたあの日と同じ様に、駅に向かうと彼女は車に寄りかかりタバコを吸っていました。

私は彼女の為に用意した、プレゼントが入った紙袋を抱いて彼女の元に駆け寄りました。

いつものように、それでも久しぶりの2人の時間に内心ドキドキしていました。

そうして辿り着いたのは、あの日の海でした。
食事に行くはずだったのに何故…?
そんな疑問を抱きながらも、行こう、と車を降りる彼女に続きました。

車を降りると彼女は砂浜には降りず、海を見つめて立っていました。
何も言わない彼女に胸騒ぎを覚えました。

無言の時間が辛く、私は耐えきれずに彼女の側に歩み寄ると、ずっと抱えていたプレゼントを差し出しました。

その瞬間、今まで感じたことの無い力で引き寄せられ、私は彼女の腕に閉じ込められました。

ごめん、別れて欲しい。

…何を言われたのか、すぐに理解できませんでした。
ただ鼻腔をくすぐるタバコと香水の香りが私の思考を支配していました。
なんで、どうして、戸惑う私に彼女はそのままぽつりぽつりと話し始めました。

別れた恋人と私が似ていること

似ていた私に惹かれ、告白をしたこと

似ていても、別の人間と割り切り
別れた恋人を忘れて私を愛していくことを決めたこと

それでも、私が髪を切ったことで
別れた恋人と同じ髪型になったことで、恋人と私は重なってしまったこと。

そして…別れてしまった恋人と同じ顔を持つ私を、愛することが出来なくなってしまったこと。


理由を聞いたと同時に彼女は初めから、私自身を彼女は愛していなかったことを
私を見ながら、別れた恋人のことを見ていたのだと、思い知らされました。


何度も何度もごめんなさいという彼女に、私は精一杯、声が震えるのを我慢しながらも、大丈夫だよ、としか言えませんでした。

物分かりのいい恋人を、最後まで演じていたかった。

きっと無意識の行動だったのでしょう。
私の頭をそっと撫でようとした彼女に、私は堪えきれず薄い胸板を押し彼女を突き飛ばしてしまいました。

その弾みで、持っていた紙袋が地面に落ちましたが、私はそれに構う余裕もなく彼女を罵る言葉を言ってしまいました。


なんで、どうして

こんな事になるなら、こんな目に合わせるくらいなら始めから出会わなければよかった

…大嫌い。


気づいた時には、全てを吐き出してしまいました。
彼女の表情は、怖くて見られませんでした。

その場にいることが辛くなり、私はそのまま顔を合わせることもなくプレゼントを拾い上げ、彼女に背を向けて、車まで走り自分の荷物を取ると無我夢中でその場を離れました。


彼女は、追っては来ませんでした。


そこからどうやって家に帰ったのかは、覚えていません。
只々毎日、抜け殻の様な日々を過ごしていました。

人を愛する事が怖くなり、しばらくは恋愛が出来ませんでしたが、今は新しい幸せを掴むことが出来ました。

それでもずっと、後悔をし続けている事があります。
最後の最後で、大人になりきれなかったこと。
子供の様に言葉を紡ぎ、彼女を傷つけてしまったこと。

最後に、どんな表情をしていたかはもう分かりません。

少しでも幸せな日々を過ごしているのでしょうか。
もし、素敵な人と出会っていたなら…少しだけ寂しいけれど、それ以上に嬉しく思います。

ありがとう、あなたの事が大好きでした。

written by 睡蓮

エピソード投稿者

睡蓮

秘密 投稿エピ 3

創作エピ中心 皆様の胸に残る、そんなお話を書いていきたいです。