喧嘩をしようよ

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ある日のデート中、アウトレットに来ていた私達はトイレ休憩を挟んだ後、カフェで飲み物をテイクアウトして帰ることにしました。
女子トイレは混んでいたものの、アウトレットから地元までは車で1時間20分ほどかかり、途中休憩を挟むのもめんどくさかったので、彼に「トイレ混んでます!」というメッセージを送り、そのまま列に並んでいました。
トイレから出ると案の定彼の方が早く、彼がトイレの近くでスマホを弄りながら待っていました。
私は彼の所まで行って「待たせてごめんね?」と声を掛けたのですが、彼のご機嫌を損ねてしまったようで「...うん」と素っ気ない返事が帰ってきただけで、カフェの方面へ歩き出してしまいました。
いつもなら繋いでくれる手も繋いでくれず。揃えてくれる足並みも、今はバラバラ。話しかけても素っ気ない。待たせたことを怒っているのかと思い、再度謝ってみても彼の機嫌は直らない...
私は、悲しさのあまりに途中で泣いてしまわないようにカフェで買った珈琲が入った紙袋の持ち手を強く握りしめながら彼の後ろを歩いて車に戻りました。
車に戻り、こぼしてはいけないと珈琲をホルダーに入れた瞬間。ガバッと勢いよく彼に抱きつかれました。
「ごめん!ごめんな!」と繰り返す彼の腕の中で、私は何がどうなっているのか分からず混乱していました。
状況に追いつかない頭を何とか動かし、彼に少しづつ理由を説明してもらうと、どうやら彼は私と喧嘩をしようと、さっきまでの冷たい行動をとっていたと言うのです。
そもそも私達は3年間のお付き合いの中で1度も喧嘩らしい喧嘩をした事がありませんでした。
そんな中、彼はいつしか私を怒らせて、怒った顔を見てみたいと思うようになったそうです。
しかし、怒らせようととった行動に、私は怒るどころか落ち込んでしまい、悲しんでいる私を見ていられなくなった彼は喧嘩をする前に謝ってしまった...ということでした。
「お前の色んな顔を見てみたかったんだ...ほんとごめんな」
彼に抱きしめられたまま頭を撫でられ、まるで小さい子供をなだめるように慰められると、好きな人に抱きしめて貰っているという安心感と、彼に嫌われたわけではないという安心感からか、私も少しづつ落ち着きを取り戻していきました。
私は悲しかったものの、3年間一緒にいても私のことをもっとよく知りたいと思ってくれる彼の気持ちが嬉しかったので、仲直りの意味を込めて彼の胸に添えるだけだった手を彼の背中に回し、抱きしめ返しました。
しかし、彼の腕から離れた瞬間彼が「でも、悲しそうな顔も可愛くて、もう少し見てたかったな〜」と 、付け足して言うので私は両手で彼の頬をびよーんと引っ張って復讐をしてやりました!
このぐらいは許されます...よね?

written by あや

エピソード投稿者

あや

投稿エピ 8