浮いた傘

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彼と雑貨屋さんに行った時のことです。
梅雨入り直前ということもあり、お店に入ってすぐの所に雨具類や冷感グッズが特集で陳列されていました。
私は(もうそんな時期なのかぁ~)なんて思って眺めていたのですが、隣りの彼は何故か目を輝かせ、「おお~!(。✪ω✪。 )✧*。」と言いながら1点を見つめていることに気が付きました。
雨が好きではない彼が一体どうしたんだろう...と思い、彼の視線の先を見ると、カッパを着込んだマネキンが、天井から糸で吊るされた黒い傘の下に立っていました。
私はそれからしばらく彼が何にそんなに感動しているのか分からなかったのですが、彼の「...ついに、傘もハンズフリーになったのか...!」という一言でハッ!っとしました。
私は恐る恐る「...傘、糸で吊るされてるよ...?」
と言うと、彼は一瞬真顔になった後「えぇ?!」と言いながら1歩退き傘と天井の間を確認し「...ほんとだ...」とつぶやきました。
次の瞬間、驚きで半ば放心状態だった彼が、我に返ったのかクルっと踵を返し、スタスタと急ぎ足で店の奥の方に歩いて行ってしまいました。
私も急いで追いかけると顔を赤くした彼が「だって...そういう傘...欲しかったんだもん...」と拗ねた子供の様に言ってきて、少年心を忘れない彼のかわいさに、とても癒された嘘のようで本当のお話でした。

written by あや

エピソード投稿者

あや

投稿エピ 8