中学校の頃、私は卓球部の部長でした。
エース兼部長という大役を任されることで
先輩や先生からは気に入られ
後輩からも慕われていたのですが
その分やはり同期には嫌われました。
卓球に熱く打ち込みながらも、同期女子の
「私の方が部長に向いてる」
「やる気でない」
などなど、聞こえる陰口に悩む日々。
同期みんなで帰っていたのも、いつしか
道を変えて一人で帰るようになりました。
その日はたまたま雨で、傘はなく
一人で雨に打たれながら帰っていました。
心がどんどん沈んでいき
涙が出そうになった、そのとき。
灰色だった世界が
パッと鮮やかな緑に変わりました。
「何してるんですか」
と後ろから緑色の傘をさしてくれたのは
一個下の中でも一番無口でクールな後輩くん。
私が一人で変えた道が
どうやら彼の帰り道だったようです。
そんなことはその時は気にならず
ただ気配もなく近づいてきてたことと
その人物の意外性に驚いた上
後輩に情けないところを見られた恥ずかしさで
ぶわっと顔が熱くなりました。
「なんでこっち歩いてるんです?
先輩たちは?」
と、彼は問いながら私の顔を見て
見たことのない驚いた表情をしてから
「…まぁ、賢いと思いますけど」
と言ってくれました。
彼はそこから、最近の私の様子のおかしさに
気付いていたと話してくれました。
「気が強い人のはずなのに
いっつも周りの顔色を伺ってるかんじで
あれーって。
嫌ですね、部長は堂々としててください
貴方しかいないんですから」
普段の無口でクールで無関心な様子からは
想像もできないほど
あたたかい言葉たちをくれて
私はその場で泣きました。
「部長は貴方しかいませんよ」
と何度も言いながら慰めてくれました。
それから私は自信を持って部活に取り組み
卓球でも結果をあげることができました。
その背景にはいつも
一緒に帰ってくれる後輩君がいました。
written by あずみや
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日常が少女マンガってよく言われる頭ん中花畑なコケシ頭。