名無しの誰かさん

    作者:七井 友一

    Twitter:@DDFF5891

新卒である運送会社に入社しました。

朝から夕方まで結構忙しい上、残業などもあり
1年が過ぎた頃からなんだか体調がすぐれなくなって
ちょこちょこ会社を休みがちになりました。

精神的なものなのか、会社に行くと嘔吐をしたり
電車の中で、息苦しくなったりと・・・
これはやばいと自分でも自覚し始めました。

そんなある日、いつも私の事を心配してくれる運転手さんがいると
先輩から聞かされました
運転手さんとはほとんど話す事が無いので
私は、誰かな?って思うようになりました。

休んだ次の日には、デスクに小さなお花が置いてあったり
長距離の仕事の時などには、
その地方の名産のお菓子などを先輩を通して頂きました。

調べれば、行き先から誰なのか特定できたのですが
「名無しの誰かさん」と言う秘密な感じが心地良くて
あえて調べませんでした。

ある日ショッピングをしていて、ふと名無しの運転手さんの事を思い出し
いつも貰ってばかりなので、靴下でもプレゼントしようと考え選んでいたら
これって、まるで彼氏にでもプレゼントするみたいだなって
ちょっと恥ずかしくなったのを覚えています。

週明け、先輩に
このプレゼントをいつもの運転手さんに渡して欲しいとお願いしたら
「先週、転勤になったよ」と言われてしまいました。
私は、大変驚き、ちょっぴり寂しい気持になりました。

最後まで、名前さえも分からずじまいでしたが
「名無しの誰かさん」のことは今でも忘れられない思い出です。