いつも頼りない彼、でも本当に窮地のときには助けてくれました

    作者:あすはちがつ

彼と人生初の海外旅行に行ったときの話です。
私も彼もその年の春から新社会人。
それまで2年間付き合っていましたがお互いこれから前のようには会えなくなることは分かっていました。

だから入社する前にお祝いを兼ねてニューヨーク旅行に出かけました。
私は英語はまったくダメでしたが彼は結構話せると言うのでかなり頼りにしていたのですが
まさかの行きの飛行機で即爆睡。

私は初飛行機で乗り物酔い、しかも薬がスーツケースの中で取り出せず。
もう限界だと思った私は何とか薬が欲しいとCAに頼むも外資系の飛行機で日本語が通じない。
何とか身振り手振りで薬を貰いました。

彼はいつもそう。
ここぞって時に役に立たないんです。
口ばかり、しかも身体が大きいくせにとっても小心者。

その後も想像通り彼の英語力では英語でのやりとりは無理、それより何より彼が小心だからまず話したがらない。
結局ガイドブックを見せてタクシーに乗り、ガイドブックを見せてレストランで注文し、もう散々。
観光地だから私の簡単で変な英語でも通じたのが幸いしましたが、彼への期待はもうありませんでした。

しかも一度はレストランにパスポートの入ったカバンを忘れる始末。
この人これから社会でやっていけるのでかしらと本当に不安になりました。

それでもさすがニューヨーク楽しいこと満載で二人で色々と観光をしました。
二日目の夜私たちは泊まっていたカジノに出かけました。
私はあまり賭け事が好きではないので一番端にあるスロットマシーンを、彼はブラックジャックか何かを真ん中のテーブルで楽しんでいました。

ビギナーズラックで私のマシーンに結構大きな当たりが出たようで次々と出されるコイン。
私は嬉々としてお金に換えに行きました。

換金所のものものしい鉄格子の中に居る人にコインの箱を渡すとかなり恐ろしい顔で何かを聞かれています。
何を言っているか分からない。
私が戸惑っているとその人は身振りが大きくなり立ち上がりとても大きいしかも声も大きい。

おろおろする私ともはや怒鳴り声に近い換金所の男性、付近にいるセキュリティーの人まで集まってきました。
私は完全に恐ろしくなりもう泣く寸前でした。
その時後ろから肩をつかまれてグイっと誰から私の目の前に立ちました。

彼でした。
大きいけど小心者でさっきまでレストランのウエイトレスにも声をかけられなかったのに、私の前に立ち換金所の人それからセキュリティーの人とも話していました。
何やら英語で話しているけど言っていることが分からない。
その時の彼は本当にヒーローに見えました。

結局私はカジノをやっても良い年齢に見えないのでIDを求められていただけで、彼がパスポートを提示してくれて無事お金を貰えました。
小心者の彼が厳つい恐持ての黒人さんに私を助ける為に立ち向かってくれたのが本当に嬉しかったです。
男はやるときはやるもんだなと彼を本当に見直しました。

その後はすっかり元に戻り旅行中ほとんど英語を話すことはありませんでしたけど。